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「チームに新しいアイディアをもたらすところが自分の特長です。アントラーズは結果が求められるチームなので、勝つことにこだわってプレーしていきたいと思います」

 2018年12月29日、清水の背番号10を託されていた白崎凌兵がアントラーズに加わった。新たに授かった背番号は41。厳しいポジション争いが待ち受けていることは承知のうえで、並々ならぬ決意と覚悟をもって新天地への挑戦を決めた。

 しかし、ライバルと激しいポジション争いを繰り広げていたシーズン開幕前、いきなり不運に襲われてしまう。怪我により無念の戦線離脱。ポジションを争うライバルたちに水をあけられてしまった。

 開幕から出遅れている間に、チームは調子を上げていた。ほどなくして全体練習に合流するも、出場機会は与えられず。激しい競争は覚悟していたが、試合に絡めない焦りともどかしさばかりが募った。

 ようやく、開幕から2ヶ月が経過した4月20日。今シーズン初の先発のチャンスを掴んだ。「長かったなという感じがします」。白崎は率直な気持ちを吐露した。

「怪我をして、チームの調子がよかった中で、なかなかチャンスが巡ってきませんでした。自分のやるべきことは、トレーニングでしてきたので、あとはやるだけです」

 明治安田J1第8節仙台戦。秘めた闘志を燃やし、初めてカシマのピッチへ立つ。アントラーズレッドに染まったスタンド。ここが新たなホームスタジアムだ。自然と鼓動が高鳴った。

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 「めちゃくちゃ緊張しました」。試合後、白崎は照れ笑いを浮かべながら記者の質問に答えていた。「自分の良さは半分も出せなかったですけど。周りに助けられたし、チームメイトの頼もしさを感じました」。スコアは1-0。アントラーズのデビュー戦を勝利で飾った。苦しい時期を乗り越えた白崎へ、指揮官も「ケガがあって本人ももどかしい時間を過ごしていた。当然、今日の試合で本人も自信をもっただろうし、チーム力をレベルアップさせていくためには、彼の力が必要」と讃えた。

 そして、迎えた5月18日。ついに、ホーム松本戦で歓喜の瞬間が訪れる。1点をリードして迎えた後半、ゴール前でレオ シルバから絶好のパスが送られた。後方から駆け上がった白崎に、スタジアムへ詰めかけたサポーターが一斉に視線を移す。左足に全神経を集中させ、丁寧にインサイドで合わせてシュート。ボールは、GKの脇を抜けて、ゴールネットへと突き刺さった。決意と覚悟の移籍から140日。初めて、聖地でアントラーズレッドを沸騰させた。

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 その後、追加点を奪い、26歳の誕生日に自ら華を添えた白崎。試合後には、「誕生日にこれだけのサポーターの前でゴールを決めて、勝てた。本当に忘れられない日になりました」と頬に興奮の色を浮かべていた。

 仙台戦で復帰して以降、ACLのアウェイ、ジョホール戦を除いた全9試合で先発出場している。激戦区だった左サイドハーフのポジションをものにした。サイドバックで縦関係のコンビを組む安西との連係も試合毎に深まり、チームのストロングポイントになっている。いまや、攻守両面でアントラーズに欠かせない存在だ。

 6月14日。つかの間の中断期間を経て、再び厳しい戦いが始まる。変革期を迎えたアントラーズに新しいアイディアと可能性をもたらす背番号41が全冠達成のキーマンだ。これから、白崎凌兵はどんな景色を見せてくれるだろうか。アントラーズとともに紡ぐ物語は、まだ始まったばかりだ。

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