「高い能力は持っているので、あとは本人が日本の文化や食事、生活にアダプトできればいい。非常に強い意欲で来ているはずだ。いい成績を残すことを願っているよ」
2018年8月。サッカーの神様に導かれて、セルジーニョは日本へやってきた。「ジーコから興味を持たれたと聞いて即決しました。あれだけの方が自分を探してくれたことは非常に光栄なことですし、それに応えたいと思いましたから」。中東のクラブからオファーもあったが断った。セルジの心を動かしたのは、敬愛する母国のアイドルからの誘いだった。
ジーコTDの期待を背負ってシーズン途中に加入したセルジは、瞬く間にチームの主力選手に定着してみせた。フットボールと真摯に向き合う姿勢は、すぐに周囲からの尊敬を集め、自然とピッチ上でもボールが集まるようになった。シーズン終盤に入ると、ACL決勝トーナメントで5試合連続ゴールを記録。重要な試合で鬼神の如くゴールを奪い、宿願であったアジア王者の称号をアントラーズにもたらした。
加入直後から獅子奮迅の活躍を披露したセルジ。やはり、その成功の裏には尊敬してやまないジーコTDの存在があった。
セルジ曰く、移籍当初にジーコTDから要求されたことは「自然体でいなさい」ということだけだったという。「世界的なアイドルが近くにいて、僕をバックアップしてくれることは、本当に心強いです。だから、僕はこのクラブで全力を尽くします」。サッカーの神様が自分の能力を信じ、サポートしてくれている。それだけで、母国から遠く離れた異国の地で闘い続ける勇気が湧いてきた。
「ジーコは闘争心を持って戦うことを一番最初に要求しています。国籍は問わず、ピッチの中で全力を尽くすこと。それをやり続けなければいけないと。全員が闘争心を持って戦えば、おのずと勝利が近づくと教えてくれました。それは自分も心掛けています」
セルジが独善的なプレーを見せることはない。どんな試合でも献身的に戦い、味方のため、チームのために闘争心を燃やす。それがジーコTDからの教えであり、アントラーズスピリットの神髄だ。
「個人的な目標よりも、アントラーズの目標「全冠達成」が重要です。アントラーズのユニフォームを着るのであれば、その意識を全員がもたなくてはいけません」
発言の端々からフォア・ザ・チームの精神が滲み出る。今季ここまで公式戦全試合に出場。疲労の蓄積も心配されるが、背番号18は毎試合勝利のみを目指して全身全霊でプレーを続けている。
「試合に出続ける方が調子を保てます。疲労感も全くないです。(神戸戦の)スタッツを見てもらえれば分かる通り、僕はボランチよりも走行距離を長く走っています。それは調子の良さが表れていると同時にチームのために走り続けることの証明だと思います」
そんな共闘精神に溢れたセルジの原動力は、ジーコTDの存在だけではない。いつも選手たちを力強く後押ししているアントラーズファミリーの存在だ。
地球の裏側で受け入れられるのか。不安に駆られた来日して間もない時期。カシマスタジアムのスタンドから送られたアントラーズファミリーの大声援に勇気付けられた。
「来日した当初から、スタジアム全体が僕の名前をコールしてくれた。あれは、本当に感激した。いまでも、毎試合僕の名前をコールしてくれるし、小さい子も僕の名前を叫んでくれたり、写真を撮りたいと言ってくれる」
セルジはとても嬉しそうに語っていた。
「ここに来ることが出来て本当に嬉しく思ってます。サポーターの皆さんにこの嬉しさ、楽しさを倍にして返したいんです」
愛するアントラーズファミリーへの感謝とともに。セルジはこれからも勝利だけを目指して、全身全霊でピッチを駆け巡る。