PICK UP PLAYER

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 小笠原満男が引退、昌子源が移籍し、新たなサイクルへ突入した2019年シーズン。今季から選手会長を務める三竿健斗は、飽くなき上昇志向とともに、これまで以上の責任感と覚悟を持って臨んでいる。

「練習の雰囲気が緩いなと感じるので、年齢が若くても、自分とか幸輝くんとか代表に行っている選手が示さないといけないし、周りが感じ取ってレベルアップしていかないといけない」

 いまのアントラーズにはサムライブルーを纏ってピッチに立つ選手が少ない。世界基準のプレーを体験した健斗だからこそ、伝えられる言葉がある。

「今日は個々でやられてたんで。そこが戦えていない以上、何も言うことはない。後半のように個々で勝てるようになれば、いい流れになっていくと思う。もう一度、一人一人がプレーの責任だったり、強度を突き詰めていかないといけない」  惨敗を喫したFC東京戦の試合後にチームへ奮起を促した。我々が目指す先は、至難の全冠達成。そのためには、組織だけでなく、個人としてもレベルアップを図らなければいけない。あえて厳しく、チームメートにも高いクオリティのプレーを要求した。

「周りに言うからには責任が生まれるし、自分が出来ていないのになんで言うんだってなると思う。自分にプレッシャーをかけながら、もっと強度を上げていきたい」

 今年4月で23歳の誕生日を迎えたばかり。世間一般でいえば、モラトリアムの真っ只中にいても何らおかしくはない年齢だ。だが、健斗が伝える言葉の節々からは責任感が滲み出る。

「年齢は気にしていないです。鹿島で試合に出ている以上は、選手だけでなく裏方のスタッフなど、その人たちを代表して戦っているので。年齢関係なくチームを勝たせると言う気持ちが大事。もっともっと上を目指して、Jリーグでは圧倒的に勝たないといけない。一人一人が責任を持ってやれれば良いと思います」

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 4月28日、日産スタジアム。待望の今季リーグ戦初先発を飾った三竿健斗は、見事なパフォーマンスを見せた。相手の隙を見逃さず、鋭い出足でボールを奪うと、素早いカウンター攻撃へ繋げる。前半は健斗の持ち味が溢れた出色の出来だった。しかし、勝ち越し点を狙う76分、後方から長い距離を走ってゴール前でクロスを受けた健斗は、勢い良くシュートを放ったが、ボールは無情にもゴール遥か上空へと飛んだ。劣勢に立たされた中で迎えた数少ない決定機。勝利に導く得点を決めることは出来なかった。

「このぐらいプレーができないと、上にはいけない。自分が試合に出ている意味は、ボールを奪うところだったり、チームを安定させたり勝たせるというところ。あとは、今日のシュートチャンスでシュートを決めるだけだった。今日の敗戦は、自分の責任だと思う」

 今季初の連敗の責任を己に追求した。さらに反省の弁を続けた。「僕があの場面で点を決めていれば、ゲームは終わったと思うので、そこは僕の力不足でした」。悔恨の念も、進化の材料だと健斗は知っている。2016年に出場機会を得られなかった時も。2017年に最終節で優勝を逃した時も。2018年にロシアW杯メンバーから落選した時も。揺るぎない自信を胸に抱いて、戦い続けてきた。さらに上を目指すためには、下を向いている暇などない。

「悲観する必要はないし、前より守備の形は上手くなっていると思う。たとえ、負けたとしてもやり続けないといけない」

 若きチームリーダーとして、鹿のエンブレムを纏う責任を一身に背負って戦う。2019年5月3日、ホーム清水戦。逆境に立たされた健斗が強いことを我々は知っている。必ずや勝利に導く活躍を見せてくれるはずだ。三竿健斗とともに戦おう。聖地のピッチで勝利のみを目指した90分が始まる。

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