PREVIEW

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 前節の横浜F・マリノス戦、前半はゲームプラン通りのシナリオを演じていた。最終ラインは相手の流動的な動きに惑わされることなく、危険なエリアを封鎖。三竿とレオ シルバの両ボランチは、相手の隙を見逃さずに鋭い出足でボールを奪った。サイドハーフは素早いスライドで相手のウイングに自由を与えず、前線の土居と伊藤もパスコースを限定して守備を助けた。ピッチの至る所で勃発する激しい球際の勝負に勝ち、試合の流れを引き寄せていた。

「守備のところで相手にスペースを与えないことを徹底してやったので、選手たちはうまく攻めさせているイメージを持てていたと思う」

 普段よりもスペースを守る意識を高めた指揮官の対策は見事にハマっていた。そして、手応えを掴んだ良い守備は良い攻撃へと繋がる。「自分たちがボールを奪ったときの相手のアンバランスな守備は、しっかり頭に入っていたし、選手にも突くべきところは伝えていた」。選手たちはボールを奪えば、矢継ぎ早に前線へ飛び出し、迫力のあるカウンター攻撃を繰り出した。連動した守備から素早い攻撃へ。チームの目指す形が、見事にピッチ上で表現されていった。

 しかし、時間の経過とともに、両サイドの守備の強度が落ちていき、鋭さを見せていたカウンター攻撃は鈍化した。疲労の蓄積とともに、試合の主導権を失っていく。中盤で相手の攻撃を潰し続けていた永木は、「失点するまでは守れていたのでよかったが、少し守備に体力を使いすぎてしまったかなと感じる。特に裕葵やシラのところは、守備の疲労度が高かった。そこで、攻撃にいく時の体力がなかったのかなと思う。もう少し自分たちが、ボールを保持できる時間が欲しかった」と振り返った。

 そして、69分に痛恨の同点弾を献上。1点のリードを耐え続けていただけに、ゴールネットを揺らされたショックは大きかった。メンタルのリカバリーが出来ないまま、さらに82分に、リスタートから一瞬の隙を突かれて逆転弾を許してしまった。

 指揮官が、「背後へのパスであったり、その後の対応であったり、寄せの距離だったり、守備の大前提となるところで、自分たちのミスから失点してしまった」と反省の弁を述べた通り、チーム戦術の大前提となる個人戦術で喫した失点だった。

 堅い守備から素早い攻撃というゲームプラン通りの戦いが出来ていた前半。だが、縦に速い攻撃を意識しすぎるあまり、自分たちの時間を作れず、長い距離のスプリントが増加した。その結果、サイドハーフの疲労を生み、ボール保持者への寄せの甘さは、守備の崩壊に繋がった。

 失点の原因を究明し、改善して次に繋げる。目前の試合の勝利にこだわる姿勢は重要だが、反省点を次に活かす見えない準備も同じくらい大切だ。若き選手たちがチームの中核を担う、変革期の渦中にある、いまのアントラーズには毎試合の成長が必要不可欠なのだ。

「守備の原則の部分、個人の技術は、ACL慶南戦でも何シーンか課題が出た。これからコツコツと改善して、継続することが重要になる。次の試合まで時間がない分、そういうところを徹底しながら、しっかりとコンディションのいい選手を持続させていきたい」

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 今季初の公式戦連敗。常勝を義務付けられたアントラーズにとっては許されざる屈辱だ。だが、さらなる高みを目指すためには、必要不可欠な試練だろう。逆境を跳ね返す力こそ、チームを結束させ、また強くさせる。そうして、勝ち取った一つ一つの勝利がチームに自信を与えていく。常勝鹿島はこれまでもそう築かれてきた。横浜FM戦でキャプテンマークを巻いた永木はこう語った。

「今はうまくいっていないが、この状況を変えるのは勝利しかない。みんなそのために一生懸命やっている。ここ2試合、結果が出ていないし、反省点はたくさんある。アントラーズは、負けてはいけないチーム。どんな内容でも勝たなければいけない。次の試合は、勝つしかないと思う」

 そう、次の試合は勝つ。そして勝ち続ける。サポーター、選手、監督、スタッフ、誰もが理解していることだ。逆境に立った今こそ、アントラーズを愛する者全てが団結し、必ず訪れる歓喜の瞬間に向けて、戦わなくてはならない。真価を見せる清水戦。アントラーズファミリー全員でともに戦い抜こう。

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