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 4月9日、強い雨が降りしきる中、敵地昌原サッカーセンターで迎えたACLグループステージ第3節・慶南FC戦。アントラーズは2点ビハインドの状況から相手のオウンゴールで1点差に迫ると、後半アディショナルには怒涛の攻撃で2ゴールを奪い、敵地で見事な逆転勝利を収めた。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、ピッチ上の選手たちは喜びを爆発させた。

 だが、最終ラインの一角として先発出場を果たした犬飼智也は、ピッチ上にいなかった。前半40分、不可解な判定でイエローカードを提示されると、後半54分には自身のクリアミスがオウンゴールとなり、先制点を献上。1点差に迫り、追い上げムードが高まっていた後半84分、ヘディングで競り合った相手選手の頭に肘が入り、2枚目のイエローカードで退場処分を受けた。反撃ムードに水を差す痛恨のプレー。己の不甲斐なさに唇を噛みしめた。

 誠実で真面目な性格。否が応でも自責の念に駆られた。「次は自分がチームを助けたい」。

 決意を新たに臨んだFC東京との上位対決。待ち受けていたのは、またしても残酷な結果だった。前半早々にマークの受け渡しミスで先制点を献上すると、警戒していたはずの永井謙佑とディエゴ オリヴェイラにカウンターから完璧に崩されて2失点を喫してしまった。

「失点したあとにボランチが前に出てしまうのも分かるし、そこをうまくマネジメントしなければいけなかった。あとは個人のところで、自分がプレーを切っていればよかったと思うし、相手と同数でも守らなければいけない時は必ずある。そこで守りきる力が必要だった」

「今後もこのような状況があると思う。今日の反省を活かしていきたい」

 どんな選手でもミスは犯す。一流と二流の差を分けるのがリカバリーの早さだ。「ミスの後のミスが一番いけないことで、ミスをした後のプレーがすごく大事」。かつて犬飼もそう語っていた。ミスが失点に直結する守備者にとっては重要な要素だ。苦境に立たされたときこそ、胸を張る必要がある。

 偉大な先人たちも、思いがけない逆境に晒され、踠き苦しむ期間があった。だが、彼らは難局を耐え凌ぎ、反撃に転じる力を持っていた。フットボールの世界で成功するためには、困難に打ち克つ強さが試される。

 不退転の覚悟でアントラーズに飛び込んだのが、1年前。「アントラーズに来て、勝っていないですからね。本当に結果で示すこと、勝つこと。とにかく、それしかないです」。アントラーズでレギュラーを勝ち取る意味を本人も良く理解している。常勝鹿島を支えた秋田豊、大岩剛、岩政大樹、昌子源といった先輩たちと、比肩し得る存在に成長しなければならない。

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「連戦の中でのコンディションのことを言ったら、きりがない。そういう中で戦っていくのが自分たちだし、こういう時だからこそ、自分たちで圧力をかけてやらなければいけない」

 今季公式戦全試合に出場している疲労の蓄積を言い訳にすることは出来ない。2年目のシーズン序盤に訪れた、逆境。だが、難局を乗り越えれば、アントラーズで求めていた成長を得られるはずだ。

 全てを進化への糧にして。いまこそ、秘めた闘志を前面に出し、胸を張って戦おう。揺るぎない信頼を勝ち取るために、仙台戦で今季2度目の完封試合を目指す。我々、アントラーズファミリーは全力で背番号39に声援を送る。

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