PREVIEW

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「しっかりと耐えて自分たちのペースに持っていって、やりたいサッカーができたと思います。とにかく、守備は無失点で行くこと。そう意識していました」

 10月7日、炎天下のカシマスタジアム。募る思いを押し殺しながら、山本が90分を振り返った。川崎Fとの大一番、結果はスコアレスドロー。追う者にとってそれは、失意の結末としか表現し得ないものだった。「前半は耐えて、後半にギアを上げる」ゲームプランを着実に遂行していただけに、ゴールネットを揺らすことができなかった悔しさが胸に去来する。55分に遠藤が放った強烈なボレーは、枠を捉える前に進路を失った。アントラーズレッドの情熱に覆われたピッチで、選手たちは必死にゴールを目指し続けた。だが、しかし――。誰もが険しい表情で、聖地を後にした。

「すぐに切り替えないといけないです。次の試合がすごく大事だと思います。先にホームで戦えるので、しっかり勝ってアウェイに乗り込みたいです」

 だが、下を向く時間などない。安西は次なる戦いへと視線を向けていた。みたび迎える聖地での大一番は、JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ準決勝第1戦。トリコロールを迎え撃ち、ホームでの“前半90分”に臨む。「ノックアウト方式なので、リーグ戦とは戦い方が変わってきます。頭でしっかりとイメージして、次に臨みたいです」。複数のポジションで奮闘を続ける背番号32は、わずかな準備期間で心身の状態を整え、勝利への決意をピッチへ解き放つことを誓っていた。

 一夜明けた月曜日。炎天下の激闘から打って変わって、クラブハウスは肌寒さすら感じさせる気候となった。大きく上下動する気温もまた、コンディション調整の敵とも言えるだろう。それでも、選手たちに動揺はない。各々が細心の注意を払いながら、目前の戦いに全精力を注いで集中力を研ぎ澄ましていった。そして火曜日、瞬く間に訪れた試合前日には、入念なミーティングとセットプレー練習を実施。過密日程が日常と化して久しい今、戦術練習に取り組む時間をほとんど確保できないからこそ、全員の意思を統一することが何よりも重要だ。「今までずっと言ってきたように、総力戦で臨むということ」と指揮官は改めて強調していた。

「川崎F戦では狙っていた結果を得ることができなかったが、選手たちは決してネガティブにはなっていない。大会が変わって、準決勝というビッグゲームに臨むことになる。モチベーションは高い」

「先発の選手、ベンチからスタートする選手がそれぞれの役割を理解して試合に入っている。明日も自信を持って送り出す」

 前日練習を終えた大岩監督はチームの思いを代弁するとともに、全選手への信頼を重ねて語った。トリコロールとの2試合は三竿健斗、チョン スンヒョン、そして安部と、3選手を欠いて臨むこととなる。まさに総力戦。仲間たちの思いとともに、アントラーズファミリー全員が一丸となって戦い抜くノックアウトマッチだ。

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「まずは第1戦に集中して取り組めば、いい成果を得られると思っている。やるべきことに集中して取り組めば、おのずと結果はついてくると思う」

 ACLでもルヴァンカップでも、頂点へ続く道のりの全てでホームゲームを先に戦い、そして敵地へと乗り込むこととなった2018年のアントラーズ。聖地で迎える“前半90分”は、今夜で5回目。その重要性は改めて言うまでもないだろう。アントラーズスピリットの神髄が告げた言葉を胸に刻み、カシマスタジアムで勝利へと突き進むのみだ。

 3年ぶりの聖杯奪回へ、いよいよ迎えるセミファイナル。アントラーズファミリーの総力を結集し、全身全霊で戦い抜こう。決勝への切符を掴み取るために、聖地で力強く前進しよう。

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