「メンバー外の時間が続いた中で、その代表というわけじゃないですけど、できるということを見せたいと思っていました。メンバー外として一緒に練習をしてきた選手の顔も浮かびましたから」
黙々と、そして虎視眈々と研鑽を続けてきた伊東が胸を張った。約3ヶ月ぶりの先発出場、そして掴み取った勝利。果敢なオーバーラップを繰り返した背番号24の言葉に、歩んできた日々と仲間たちへの思いが宿っていた。
「みんなが試合に出るために一生懸命やっていて、ベンチ外の時でもしっかりとやってきました。今まで試合に出ていなかった選手が活躍することで、チーム力が上がっていくと思います」
前線でボールを追い続け、アントラーズの推進力となるべく献身を続けた金森もまた、ピッチから遠ざかった時間を振り返っていた。ゴールネットを揺らすことができなかった悔しさを滲ませながらも、背番号14は前を向いていた。
「我々はチームとしての強化を目指している。チームとして、組織として、強くならないといけない。チーム全員が一つの組織として活動し、結果を出さなければならない」
長崎戦、2-1。悔しき日々を過ごしてきた面々の奮起は、まさにジーコの言葉を体現するものだった。想像を絶する高温多湿、過酷な90分。信じられないような失点でビハインドを負い、道のりはさらに険しいものとなった。それでも、アントラーズは踏みとどまった。ミドルゾーンを制圧したレオ シルバの輝き、そしてチームを導くゲームキャプテン、遠藤の一振り。初めて乗り込んだ諫早の地で、意地の勝利を掴み取ったのだった。
指揮官は「一様に高いパフォーマンスを発揮してくれた」と、期待と信頼に応えた選手たちを称えた。4名もの先発変更を施し、敵地で掴んだ勝ち点3。チーム全員の競争意識を刺激する、かけがえのない勝利だ。ピッチに立つために、己の存在価値を示すために――。切磋琢磨はさらなる高みへと導かれていく。中3日の準備期間、グラウンドは熱を帯びていた。長崎戦ではベンチからのスタートだった鈴木は「コンディションは万全。試合に出たい」と、胸の奥底に宿る闘志を隠そうとはしなかった。
「これ以上は絶対に落とせない。全員で毎試合、気を引き締めてやっていかないといけない」。永木は改めて決意を刻んだ。8月後半、マッチカレンダーに記されているのは3つのホームゲーム。聖地の夏を、勝利とともに――。全員の思いは一つだ。歓喜と失意を繰り返す日々に終止符を打ち、連勝街道を突き進んでみせる。
さあ、トリコロールとの対峙が始まる。1993年からトップディヴィジョンで戦い続け、幾多もの激闘を繰り広げてきた難敵を、アントラーズレッドの情熱で凌駕する90分だ。カシマスタジアムに、歓喜の歌声を。今夜も勝利のために、全身全霊で戦い抜こう。