PREVIEW

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「アントラーズというクラブのブランドがある中で、ただ在籍することで満足しないこと。クラブの勝者たる素晴らしい歴史に恥じないようにすること、そして名を残すことだ」

「短いキャリアの中で、今を、今日を一生懸命やるということ。新たな歴史をこのクラブを作ってほしい」

 屈辱の逆転負けから3日。青空のクラブハウスに、アントラーズスピリットの神髄が再び注入された。ジーコTD、合流。トレーニングに臨む選手とスタッフ、その心の奥底に深く強く刻まれた言葉の数々――。今季から鹿のエンブレムを纏う安西は「アントラーズでプレーすることの重みを改めて感じました」と神妙な表情で語っていた。鹿嶋での12年目を歩む遠藤も「当たり前のことを当たり前にやる。それが大事だということをこのクラブにいる人はわかっているけど、難しい。改めて思い出させてもらった」と、静かに言葉を並べていた。

 第19節終了、7勝5分7敗。勝ち点26、暫定9位。4日前の聖地は閉塞感に覆われた。屈辱としか表現し得ない逆転負けを喫し、青赤に初のシーズンダブルを許してしまう。怒号とブーイングが入り混じる熱帯夜、それでも選手たちの背中に注がれたのは大きなチームコールだった。道のりは続く。進むしかない。

「リーグ戦は9位だが、フットボールに不可能は存在しない。まずは自分たちが可能であると信じることから始まり、そこから努力をして、献身的に取り組むことだ。確かに勝ち点差は開いているが、自分たちがどんな姿勢で、どんな意識で挑むかによって、状況を変えることができる」

 次なる戦いを前に、クラブハウスのグラウンドは熱を帯びていた。激しいボディコンタクトが繰り返され、鋭いシュートがゴールネットを揺らす。アントラーズの魂が鋭い眼光を向ける先で、選手たちはひたむきにボールを追っていた。全ては、勝利のために――。その光景を見守っていたのは、SPIRIT OF ZICOの横断幕。視界に捉えた時の心境を、ジーコはこう紡いだ。

「非常に嬉しく思うと同時に、一人間として誇りに思える。自分の努力は無駄ではなかったと、報われる瞬間だった。クラブの土台作りをしっかりとやって、伝統を築き上げてきた。そして今もサポーターが横断幕を誇り高く掲げている。感慨深いことだよ」

 背番号12に向けて言葉を連ねる、その表情は穏やかだった。「勝者たる歴史を築き上げたのは自分だけでなく、スタッフ、監督、フロント、サポーターが全身全霊で取り組んできた成果なんだ。それがタイトルと勝利に結びついてきた」。そして続けた。「いかに次の世代に受け継いでいけるかを全員で考えないといけない。一人でも多く、それを受け継ぐ人を増やして継続していきたい」。アントラーズDNAを継承し、新たな歴史を築き上げること。勝利の伝統を、これからも――。

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 さあ、ジーコとともに歩む道のりが再び始まる。そのスピリットを胸に刻み、アントラーズファミリー全員でともに戦おう。カシマスタジアムに歓喜の歌声が響き渡る光景だけを思い描き、勝利のために全身全霊で戦い抜こう。

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