「勝ち切らないといけなかった。でも、負けなかったことを次につなげないといけない」
4日前、熱帯夜のヤマハスタジアム。幾多もの名勝負を繰り広げてきたサックスブルーとの激闘は、3-3の痛み分けに終わった。敵地で先制を許しながら、一時は逆転に成功したこと。守るべきリードを保てず、連続失点で再びビハインドを負ったこと。それでも終盤、意地のゴールで追い付いてみせたこと。3得点、3失点――。数々の収穫と課題が次々に想起されるミックスゾーンで、選手たちは90分を静かに振り返っていた。冒頭は三竿健斗の言。胸に刻まれた悔しさとともに、思いが次々と紡がれていった。
「この試合だけで考えたら“よく追い付いた”と言えるかもしれないけど、長い目で見たら痛い引き分けだった。自分たちは優勝するためにやっているので」
気迫の同点弾を決めてみせた背番号8は「内容は良かった」と手応えを掴んだ様子を見せつつ、「だからこそ、もったいなかった。勝てていれば、本当に自信になった試合だと思う」と、悔しさを露わにしていた。残り19試合、21ポイント差。現在地と向き合い、そのうえで「優勝」の二文字を持ち出した土居の言葉に、並々ならぬ反撃への決意が滲んでいた。
「最近は後方でのパス交換でプレスをかいくぐることができている。自分が位置を下げなくても、いいボールが入ってくる。クロスに対してゴール前に入っていく人数も多いし、攻撃の流れはいい」
インターバル明けの2試合、町田戦と磐田戦でゴールネットを8回揺らしてみせたアントラーズ。シーズン前半戦、「得点力不足」という不本意なフレーズとともに低空飛行を続けた日々を払拭すべく、中断期間に積み重ねたトレーニングは間違いなく結実している。最前線で体を張り続ける鈴木は「ビルドアップがいい形でできているから、やりやすい」と頷いていた。「ブレずにやっていくこと。それが自分たちの強みだし、それが重要なことだと思う」。自らがチームを牽引すべく、背番号8は努めて前向きのベクトルを放っていた。「悲観せずに、次につなげないと――」。
「磐田戦は3失点を喫してしまって、勝ち切ることができなかった。勝つことが何よりも重要な目的。良い内容を何とか勝利につなげたい」
中3日で迎える一戦を見据え、指揮官は決意を語った。「隙を突かれて喫した」3失点への反省を胸に、そしてさらなるゴールラッシュへの渇望とともに、攻守のトレーニングは熱を帯びていく。酷暑が続くクラブハウスには、大迫勇也の姿も。絶え間ない努力を積み重ね、ドイツで、そしてロシアで輝きを放ったストライカーは、チームに大いなる刺激を注入してくれた。悔しさ、刺激、手応え、反省。全てを糧に、進むしかない。
さあ、7月唯一のホームゲームが始まる。リーグ戦では2ヶ月ぶりに帰還する聖地で、勝利を掴んで反撃の狼煙を上げる――。その光景だけを思い描き、アントラーズファミリー全員でともに戦おう。15日間での5連戦。真夏に待ち受ける過酷な道のりを、総力戦で突き進むために。鹿嶋の夜を、歓喜の歌声で包もう。