FREAKS

すべての力を“ひとつに”

特集

2023/2/1

※本記事は、2023年1月15日現在の情報を基に構成されました。

Jリーグ開幕30周年の節目となる2023シーズンがいよいよ始まる―。

チームは移籍、期限付き移籍からの復帰、新卒の11人を新たに加えた総勢34人で臨む。

岩政大樹監督のもと、4人のキャプテンとともに“ひとつに”なって頂を目指していく。

2023シーズンの開幕が迫っている。

ワクワクするような高揚感とともに、背筋がシュッと伸びるような緊張感が漂う。さまざまな感情が交錯するこの時期は、まだ見ぬ未来に思いをはせ、誰もが強く野心を抱く。

Jリーグクラブ最多の20冠を獲得してきたアントラーズにかかわるすべての人たちの思いは“ひとつ”──。それは国内三大タイトルの獲得にほかならない。昨シーズン途中からチームの指揮を執ることになった岩政大樹監督もタイトルを意識している。

「心地よい緊張感があります。監督として迎える初めてのシーズンスタートでもあり、身が引き締まる思いです。1年間を戦ううえで、いろいろな戦略を立てていますが、臨機応変に、変幻自在に、チームを成長させながら、最終的に一番高いところでシーズンを終えられたらと考えています」

あらゆる局面で、ゲームを支配し続ける。そんな主体的なフットボールの構築に取り組む岩政監督は「昨シーズン終盤の2、3試合の戦い方がベースになる」と、今シーズンの展望を口にし、「自分たちがピッチでやろうとしている絵は共有できているので、それを継続し、追求していきたい。どの監督もゲームを支配したいと考えているはず。それを表現したチームが優勝に近づく」と付け加えた。

頂点に向かう準備は着々と進んでいる。

シーズン開幕に先がけて、毎年恒例の新体制発表会が1月15日、鹿嶋勤労文化会館で行われた。今年は報道関係者だけではなく、初めてファン・サポーターを会場に招き、これまで以上に趣向を凝らした発表会を行った。

司会・進行役を務めたのはアントラーズの中田浩二クラブ・リレーションズ・オフィサーと、NHK水戸放送局の三島早織アナウンサーだ。まず、登壇した岩政大樹監督が“競争”と“成長”をキーワードに掲げ、タイトル奪還に向けて意欲を語った。チームは始動したばかりだったが、選手たちからほとばしるような熱を感じ取り、「彼らのはやる気持ちを抑えないといけないくらい躍動している」と笑みがこぼれた。

新たな試みも明かされた。それはキャプテン4人制だ。今シーズンの登録選手は34名と、かなりの大所帯になることもあり、「1人でまとめるのではなく、4人で役割分担しながらやっていくほうがいいのではないか」という岩政監督の発案だった。昨シーズンから引き続き、キャプテンを務める土居聖真は、次のように賛同の意を表している。

「大樹さんから話があったとき、おもしろい試みだなと感じた。自分一人だけだと、いろいろと抱え込んでしまうところもあったので、4人で話し合いながらチームの一体感や団結力を出していけたらと思っています」

MFである土居以外の3人のキャプテンは、GKのクォン スンテ、FWの鈴木優磨、そして今季、4年ぶりにアントラーズに戻ってきたDFの昌子源が務める。いわゆる各ポジションのリーダー的存在の集合体であり、円滑な意思疎通を図るうえで、これ以上にない人選といえるだろう。

新体制発表会の大きな見どころは新たな戦力のお披露目にある。他クラブからの補強や期限付き移籍からの復帰、さらにルーキーを合わせ、今季は総勢11選手が加わった。これは2020年と同じく、過去最多の補強人数になる。

なかでも話題をさらっているのが、かつてアントラーズのタイトル獲得に貢献した昌子と、植田直通の両CBの復帰だ。前者はトゥールーズ(フランス)、G大阪を経て5年ぶりに、後者はセルクル・ブルージュKSV(ベルギー)、ニーム・オリンピック(フランス)を経て4年半ぶりにアントラーズのユニフォームに袖を通す。

彼ら2人がそろって登壇すると、鳴り止まない拍手の時間が続いた。

「ただいま!」

開口一番、こう切り出した両選手は「アントラーズの先輩たちの背中を見て、学んできたことを還元したい。タイトルを獲ることで、ファン・サポーターの期待に応えたい。自分たちが何を求められているのかはわかっている」と言葉をそろえた。

多士済々の顔ぶれが集うことで、チームは活性化していく。戦術的な幅と厚みをもたらすのがパワーのあるFW知念慶、サイドアタッカーのMF藤井智也、ボール奪取力と展開力に優れるボランチの佐野海舟だ。期限付き移籍からの復帰組になる垣田裕暉、染野唯月(ともにFW)、MF須藤直輝も「ひと回り成長した姿を見せたい」と意気込む。

プロのキャリアをスタートさせる3人の若鹿は、スピードとテクニックを兼備し、泥臭い守備もいとわないFW師岡柊生(東京国際大学)、状況判断がよくクレバーなCB津久井佳祐(昌平高校)、そして世代別の韓国代表のキャリアを持つ身長192センチの大型GKパク ウィジョン(漢陽工高校)だ。いずれも計り知れない可能性を秘め、今後の成長が楽しみでならない。

Jリーグ30周年を迎える今シーズンのクラブスローガンは「Football Dream―ひとつに―」に決まった。アントラーズファミリーが“ひとつに”なってタイトル奪還を目指す。原点となるアントラーズスピリットに立ち返り、また改めて一体感を胸にタイトルへ立ち向かおうという意図と覚悟を込めている。34人の選手、スタッフ、そしてクラブを支えるすべての人々とともに2023シーズンの戦いが始まる。