「昨季も夏場にアウェイの連戦があって、『全員で乗り切ろう』という話をした。このクラブの根底にあるものは変わらない。全員で、チームとして乗り越えていくつもり。選手もそう考えていると思う」
聖地での歓喜から24時間も経たないうちに、チームは鹿嶋を出発した。中3日、戦いの舞台はオーストラリア。指揮官は大幅なメンバー変更を断行し、競争意識に火をつけた。そして掴み取った、かけがえのない3ポイント。「どこが相手でも勝てたと思う」。流血をものともせず、魂のヘディングシュートを突き刺した植田は、気迫に満ちた90分を誇っていた。そして山本は「出場機会があまりなかったメンバーで戦って、いろいろな気持ちがある中で『チームのために勝とう』と話していた。大きな勝利だと思う」と、その価値を噛み締めていた。
「アグレッシブにやってくれたので、非常に良いゲームだった。意識を高く持ってやってくれているし、評価していきたい」。己の存在をアピールすべく奮起してみせた選手たちを、大岩監督は真っ直ぐな言葉で称えた。永木がミドルゾーンを制圧し、金森は前線で献身的にプレスを敢行。鈴木とともにチームの推進力となった。そして伊東が果敢な攻撃参加を繰り返せば、アントラーズレッドを纏って初めて公式戦のピッチに立った犬飼も、勝利への決意を激しく表現し続けた。「監督は誰を試合に選んでいいか迷うと思う」。鈴木はそう言って、帰国後の定位置争いへ闘志を燃やしていた。
切磋琢磨を繰り返しながら、勝利を積み重ねる——。理想像の体現に向けて、計り知れない意味を持つ90分だったことは間違いない。3日のG大阪戦、そして7日のシドニーFC戦。5日間での2試合で計21選手がピッチに立ち、そして連勝を果たした。個人として、そしてチームとして。自信と手応えを携えて、チームは8日の夜に鹿嶋へと帰還した。
休む間もなく、戦いは続く。紫紺の難敵を迎え撃つ一戦へ、アントラーズに与えられた準備期間は事実上、1日のみ。そのうえ、試合前日の鹿嶋は悪天候に見舞われた。クラブハウスでのトレーニングが不可能となり、スケジュールを急遽変更。雨風の下、選手たちは勝利だけを見据えてボールを追った。日程、天候、そして対戦相手。立ちはだかる全ての要素に打ち勝たなければ、連勝街道を突き進むことなどできない。
土居は言う。「試合に出ているかどうかは関係なく、準備が大事。準備で決まると言っても過言ではないと思う。みんなでしっかりとやって勝つだけ。総力戦です」。今日もまた、チーム一丸で立ち向かう90分が始まる。16日間での5連戦、第3章。聖地で、ともに戦おう。常緑のピッチへ降り注がれるアントラーズレッドの情熱は、何者をも凌駕するのだから。全員で戦い、そして歓喜を分かち合おう。