柏戦のみどころを読む!

「すごく良い雰囲気をサポーターの皆さんが作ってくれた。その中で試合をすることができる幸せを感じていたし、一緒に喜ぶことができてすごく嬉しい」

 気迫に満ちたエアバトルを繰り返し、鉄壁の守備を築き上げた植田が、充実感に満ちた表情を見せていた。鹿のエンブレムを纏って5年目、初めて足を踏み入れた満員のカシマスタジアム――。フットボーラーとしての喜びと誇りを胸に走り抜けた90分は、かけがえのない時間だった。植田だけではない。“共闘”を掲げてピッチに立ち続ける昌子が「思いに応えたかった」と胸を張り、「サポーターが力になった」と土居が口を揃えた。ともに戦い続ける背番号12への思いを、誰もが真っ直ぐな言葉で紡いでいた。

 11月5日、穏やかな秋晴れに恵まれた聖地。リーグトップの得点力を誇る浦和は、連覇という唯一絶対の目標へと突き進むアントラーズファミリーを前に、ただひたすらに沈黙の時を過ごすのみだった。放たれたシュートは3本のみ。「強い気持ちでみんなが集中して、互いにサポートしながらプレーできた」。繰り返されるタックル、その痛みで何度も顔を歪めながらも身体を張り続け、献身の意味を示した山本は言う。「“チームのために何ができるか”なので。状況に応じたプレーを選択できるチームだと思う。それが強みだと思う」。真のプロフェッショナルとして任務を遂行した背番号16は、冷静沈着に闘志を燃やし続けた90分を経て、胸に宿る自信を言い放ってみせた。1-0。アントラーズ“らしい”と称される、まさに会心のウノゼロだった。

 他16クラブに先駆けて第32節を戦い、計り知れない価値を持つ3ポイントを掴み取ったアントラーズ。積み重ねてきた勝ち点は70に到達し、2位との差は暫定で7に開いた。川崎Fに残された戦いは3試合、最高到達点は72ポイント。すなわち、アントラーズが頂点へと登り詰めるための条件が「勝ち点3」と定まったのだった。

 「優勝に王手」、「連覇はほぼ手中」――。“趨勢は決した”、そう言わんばかりの言葉が紙面に並んだ。それほどの重みを持つ勝利だったことは間違いない。アントラーズファミリー全員で掴んだ勝ち点3が、極めて重要な意味を備えていることは疑いようがない。

 だが、しかし――。

「まだ、何かを勝ち得たわけではない。そうして成し遂げた後に、何か言葉を発することができればと思う。今はまだ、その時期ではない」

 冷静かつ繊細に守護神の股下を射抜き、値千金のスコアを刻んでみせたレアンドロの言葉が全てだ。フットボールの王国で荒波に揉まれてきた背番号11は、聖地を沸騰させた一撃の興奮を自ら鎮めるかのように、「連覇」という言葉を持ち出した報道陣を制するように、進むべき道のりを静かに示した。「ピッチ内での謙虚さを全員で示すこと」。目前の試合に集中し、勝利だけを目指してチーム一丸で戦う――。いつ何時も変わることのない姿勢を貫けずして、求める場所へたどり着くことはできない。まだ虚像に過ぎない光景を前に浮足立つような者に、フットボールの女神が微笑むことはないのだから。だからこそ誓う。「相手云々ではなくて、残り2試合も勝つ」。山本の言葉が全員の思いだ。次もチーム一丸で勝ちに行く。ただ、それだけだ。

 
 11月26日、J1第33節。柏レイソルとの対峙は、聖地で戦う最後の90分だ。シーズン終盤の変則日程、3週間ものインターバルを挟んで迎える一戦。心身の充電期間を得た選手たちはグラウンドへ帰還し、静かに研鑽の日々を送っている。「先を見るのではなく、目の前の試合で勝ち点3を取ること、勝ちたいと思うことが何よりも重要」。指揮官の視線は一点に定まっていた。誰もが勝利を見据え、ひたむきにボールを追う。進化を追求する道のりに終着点などない。

「ホームのサポーターがくれる力は非常に大きい。ホーム最終戦、皆さんの力を借りて勝利を掴みたい」

 選手として、コーチとして、そして指揮官として――。ともに歩みを進めてきた背番号12への信頼を、大岩監督は隠そうとしない。2017シーズン、カシマスタジアムでのラストゲームだ。アントラーズレッドで埋め尽くされたスタンド、チーム一丸で突き進む90分――。思い起こしてみよう、埼玉で演じた魂の90分を。あれから1年。思い描いてみよう。歓喜が爆発する聖地の姿を――。

 アントラーズレッドを纏い、勝利を一つずつ積み重ね、時に悔しさに耐え、時に不甲斐なき己と向き合い、そして喜びを分かち合ってきた道のりを振り返った時、次なる勝利への揺るぎない意志が湧き上がってはこないか。勝利を義務と呼び、それを自負できるだけの矜持を胸に宿すに至った栄光の日々を思い返した時、次なるタイトルへの渇望が心の底から湧き上がってはこないか。

 アントラーズが産声を上げた瞬間からともに戦ってきた者も、10年前、5年前、1年前、そして昨日、鹿のエンブレムを胸に纏った者も――。今はまだ物心がついていない、しかし既にアントラーズレッドを纏った小さなサポーターもいるだろう。そしてこれからも、ともに戦う仲間たちは数え切れないほど増えていくだろう。そんなファミリーの誰もが、誇ることになる。アントラーズという物語に刻まれた、数え切れないほどの魂の戦いを。2017年11月26日、聖地で掴み取った栄光を、ファミリーみんなが誇ることになる。そう信じて、そう誓って、今までと同じように、これからと同じように、このホーム最終戦も全員で戦いたい。

 アントラーズレッドを纏い、アントラーズレッドに満たされた喜びを、自分たちがアントラーズである誇りを胸に。そして、アントラーズファミリーの一員となり、かけがえのない仲間たちと出会えた幸せを噛み締めて、勝利への揺るぎなき決意を携えて、いざ。今日もともに戦おう。過去、現在、未来、その全てをつなぐ道のりの上に立つ、全員で戦おう。そして必ず、20個目の星を――。次の史上初を、見つけに行こう。

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