柏戦の注目プレーヤーは、小笠原満男&遠藤康!

「満男たちの背中を見て成長して、チームの柱になっていく途中だと思っている。そういう存在になれるような場を作ってあげたい。選手としての器を大きくして欲しい」

 己のスタイル構築に悩み、もがき苦しみながらも前進を続ける土居への期待を語った指揮官は、当然のようにその名を挙げた。アントラーズDNAの絶対的源泉として、勝利への渇望と意志を体現し続ける背番号40――。キャプテン、小笠原満男。「どんな状況でも関係ない。どんな時でも勝たなければいけない」。その視線は今日も、勝利だけを見据えている。

「経験がある選手で、全幅の信頼を置いている。セットプレーもそう。どのようなタイミングでも自信を持って送り出せる選手だと思っている」

 揺るぎない信頼を、指揮官は隠そうとはしなかった。プロフットボーラーとして走り始めて11年目。その全ての時間を鹿のエンブレムとともに刻み、その左足で未来を切り開き、そして確固たる地位を築き上げてきた背番号25――。副キャプテン、遠藤康。「勝ち切るためには、試合に出場する選手だけでなく全員でしっかり戦わないといけない」。その目線は常にチーム全体を照らしている。

 その背中と言葉でアントラーズを牽引し、支えてきた2人。リーグ開幕5試合、その名は当たり前のように先発メンバーリストにあった。そして4月16日の第7節、仙台戦。杜の都で迎えた夜、キャプテンが大記録を達成する。J1通算500試合出場――。同期加入の曽ケ端と同時に到達した景色は、鹿のエンブレムを纏う者にとって未踏の場所だった。「個人的なことはチームには関係ない。勝つことが一番」。不変の姿勢を貫く小笠原とともに任務を果たすため、遠藤は左足を振り抜いた。43分、ペナルティーエリア右角から突き刺してみせた強烈な一撃。4-1。寒空の仙台に、アントラーズレッドの歓喜と誇りが響き渡った。

 だが、その後の道のりは険しいものとなった。5月14日、神戸戦。広州恒大とのアウェイゲームを9日後に控えた聖地での戦いで、背番号25をアクシデントが襲う。離脱を強いられ、ACLラウンド16をスタンドから見届けることとなった。「セカンドレグは“無理でも”出るよ」。悲壮な決意を語っていたが、思いは届かず。敗退の翌日、指揮官の交代が発表されたのだった。「ケガをした自分が悪いけど、過ぎたことでもある。切り替えてやっていくしかない」。痛恨の念とともに立ち上がった遠藤は、夏場に定位置を奪い返した。7月5日、先発復帰を果たした吹田の夜。超絶技巧のループシュートでスコアを刻み、22日のセビージャFC戦ではシャーレを掲げた。時にはボランチを務めて新境地を切り開き、「“こういうボランチがいたらいいな”と思っていた形を出して、理想像を見せていきたい」と、新たな可能性を示してみせた。だが、9月9日の大宮戦で負傷。またもアクシデントに見舞われた背番号25は、10月下旬まで戦いの場から離れることとなった。

 小笠原が歩む道のりもまた、平坦なものではない。ミドルゾーンの定位置争いが激化する中、大岩監督はボランチの一角に三竿健斗を抜擢。進化を続ける若武者がチームに変化と刺激をもたらした一方で、背番号40は次第に出場機会を減らすこととなった。日々のトレーニングに全てを注ぎ込み、常に万全の状態を保ち続ける闘将は、出場停止の神戸戦と天皇杯初戦を除く全ての戦いで試合メンバーに名を連ねている。しかし、実に3ヶ月もの間、リーグ戦のピッチから遠ざかることに。出番が訪れることなく試合終了のホイッスルを聞いた後、一人ひとりに駆け寄って言葉をかける。そしてロッカールームへ引き揚げると、勝利という任務遂行を喜びながら、その場に立てなかった悔しさを噛み潰すかのような表情でミックスゾーンを立ち去る。その繰り返しだ。視線は常に、次なる切磋琢磨の場へと向いている。足早にスタジアムを後にする姿は、ポジションを奪い返すための日々を自ら迎えに行くかのようだ。

 「必ず苦しい時が来ると思っていた。こういう時こそ、みんながチームのためにやらないと勝てない」

 10月29日、札幌戦。腕章を巻いたのは遠藤だった。横浜と神戸で痛恨の思いと向き合っていたアントラーズにとって、極めて重要な意味を持つアウェイゲーム。踏みとどまるために、そして再び勝利の道を突き進むために――。背番号25は献身した。労を惜しまずに守備へ戻り、ピンチの芽を摘んで攻撃に参加する。「頑張る選手が大事。そういう先輩たちを見てきたし、見習ってプレーしたい」。その言葉を体現し、是が非でも掴まなければならなかった3ポイントにたどり着いた。そしてベンチでは、小笠原が声を張り上げていた。指揮官から意見を求められ、言葉を交わす。刻々と移り変わる戦況を見定めながら、チームとともに90分を戦い抜いた。「出場できなくて悔しい思いをしている選手は満男など、たくさんいる」。フットボーラーとしての記憶が、大岩監督に思いを代弁させる。そのうえで指揮官は「落ち着きがあって、若い選手にアドバイスをすることができる。選手同士はもちろん、自身も頼りにしている。それは隠す必要はないとも思っている」と、背番号40に絶対の信頼を託している。

 「10年後、大岩は白髪が増えているだろうし…」。言葉の魔術師・オズワルド オリヴェイラとともに、10個目の星を刻んだあの日――。2007年12月1日。キャプテンは新たに纏った“40”を燦然と輝かせ、満員の聖地で所狭しとピッチを駆けていた。大逆転優勝を信じて戦ったアントラーズを力強く前進させる先制PK。計り知れない重圧のかかる一撃をゴール左隅へ突き刺し、拳を握った。3-0。カシマスタジアムは祝祭空間と化した。

 遡ること10年、あの日の美しき光景。10個目の星を刻む数分前、情熱の指揮官が最後の交代カードに指名したのが遠藤だった。優勝に迫った聖地のピッチへ、ルーキーを送り出す――。プレータイムはわずかに2分。しかしそれは、大いなるメッセージが込められた時間だったに違いない。歓喜の瞬間をユニフォーム姿で迎えた栄誉とともに、19歳の笑顔が弾けた。

 10冠達成の記憶から早10年。あの日の4番は新たなるキャリアを突き進み、アントラーズの指揮権を託されるまでになった。あの日の40番は今日も背番号40を纏い、全てをアントラーズに捧げてチームを牽引し続けている。あの日の25番は今日も背番号25を纏い、アントラーズDNA継承の証をピッチに刻み続けている。

 勝利への意志を体現し続ける背番号40に心からの敬意を。プロフットボーラーとして逞しく進化を遂げてきた背番号25の歩みに心からの拍手を。そして改めて思う。次の勝利も、2人とともに。「全員で戦うよ。絶対勝つよ。行くぞ!」「気持ちを一つにして、絶対に勝つよ!」2017年11月26日、J1第33節。円陣を解く2人の言葉、その思いは一つだ。聖地で戦う今年最後の90分。全員で挑む大一番が、始まる。

   


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