広島戦の注目プレーヤーは、安部裕葵!
「普通の、安定したプレーをしていても若手らしくないですし、それだったら先輩方が試合に出たほうがいいと思うんです。何度仕掛けて何度取られても、下を向くことなく何度も挑戦したいと思います」
正確なボールコントロールとしなやかに加速するドリブル、物怖じせずに前へ前へとボールを運ぶ姿勢――。思えばあの時から、その存在感は異彩を放っていた。2月4日、DAZNニューイヤーカップ第2戦。18回目の誕生日から1週間のルーキーが、寒空の宮崎で躍動した。調整段階のプレシーズンマッチとはいえ、不甲斐ない90分を過ごしてしまったアントラーズにあって、安部裕葵が放った輝きは鮮烈な印象を残した。
0-1で迎えた62分、まだ真新しい背番号30が姿を現す。「他の選手が疲れている中で、自分のところで仕掛けないといけないと思っていました」。その言葉通り、ワンタッチで前を向く積極性で相手の脅威となり続けた。幾度となく鳴り響いたホイッスルは、横浜FCが安部をファウルで止めるしか術を持たなかった証左だ。それでも若武者は「FKをもらうだけじゃなくて(マークを)剥がせないとダメですね。もっと顔を上げて、余裕を持たないと」と、己の突き詰めるべき道を明確に照らしていた。「何もしないよりは間違ったほうがいいですし、アクションを起こしたほうがいいと思っています」と、物怖じせぬ姿勢を貫いてスタジアムを後にした安部。その言葉を聞き、その振る舞いを目の当たりにした誰もが “彼の成長が楽しみだ”と思わずにはいられなかったに違いない。
果たして安部は、軽やかに、しかし一歩ずつ着実に階段を上ることとなった。4月1日、大宮戦でJ1デビュー。クラブ史上3番目の年少出場記録を刻んでみせた。昌子が「人とは違うドリブルをする選手。ここがスタートライン」とさらなる進化への期待を寄せれば、土居は「本当に良い選手だと思うので、上がってきてほしい」と早くも築かれつつあった信頼を語っている。
能力の高さを裏付ける、先輩たちの言葉。安部は歩みを続けた。4月12日にACL初出場、22日にJ1初先発を記録。5月にはトゥーロン国際大会に臨むU-19日本代表にも名を連ねている。そして6月21日の天皇杯2回戦ではプロ初得点を記録。7月22日には、その名を国内外に轟かせてみせる。セビージャFC戦、衝撃の3人抜きドリブル――。「得意なプレーですし、自然と身体が動きました。このレベルが相手でもできたのは自信になりました」。安部は充実の表情で、進化の証を刻んでみせた。
「あのようなプレーを表現できたのだから、どんなレベルでもどんな相手に対してもやり続けないといけない。感じたもの、得たものを表現し続けてほしい」。指揮官の期待を背負った安部は、その言葉を体現するかのように躍動を続けた。アンダルシアの雄を切り裂いた1週間後、J1初得点を記録。「レアンドロがワンツーで入ってきてくれて、その時点で勝負があったと言ってもいいくらい。自分はギアを上げる必要もなく、ジョギングくらいの感覚でスペースに走ったんです。レアンドロのパスが9割と言ってもいいほど、良いところに流してくれました」。その言葉を聞きながら、まるで映像を観ているかのような錯覚すら覚えた。初めて刻んだスコアの余韻を凌駕する、冷静沈着なプレー描写だった。
「自分ができることだけをして、それが結果につながればいいです」。背番号30は今や、アントラーズに不可欠な存在だ。9月のリーグ戦、連勝街道を突き進んだ日々にあって、指揮官は1枚目の交代カードに安部を指名し続けた。1点リードの大宮戦、1点を追う新潟戦、そして勝ち越しを目指すG大阪戦。置かれた状況が違ってもピッチに送り出されるのは、戦況を読む能力に揺るぎない信頼があるからこそ。「点を取らないといけない状況であれば取りにいくし、リードしている状況であれば前線からの守備をする。流れを見て判断したいと思います」。言うは易く、行うは難し――。3連勝という結果が、任務遂行の証だった。
「いつもとは違うピッチの状態で、相手の守備の人数も多くて…。自分なりにずっと考えていたんですけど、考えたまま試合が終わってしまいました。“これだ”と決めて、行動することができませんでした。まずは周りの選手を助けてあげるとか、もっとプレッシャーをかけたり、周りに声をかけたりする方が大事だと思うので、反省しています」
だからこそ、安部は失意の敗戦を悔やむ。9月30日の鳥栖戦。62分、この日も最初の交代選手としてピッチに立つと、突破口を見出そうと縦横無尽に駆けた。だが、求める結果を得ることはできなかった。「攻撃陣としては、無得点で終わってはダメですね」。底知れぬ悔しさとの狭間で「考える習慣は悪くないと思うので、下を向くことはないです」。変わらぬ姿勢を貫き、そして奮起を誓っていた。
「夢生さんと話をしたんです。僕よりも10年くらい(長く)やっているので、プレーに関することや選手、人としてのことを教えてもらいました。夢生さんだけじゃなく、いろいろな選手から教わっています。先輩によって言うことは違うけど、自分を持っているのが共通点。先輩たちは周りに流されていない。自分は芯が強いと言われますけど、柔軟性のある芯だと思う。自分にあったものを取り入れていきたいです」
実力者たちとの切磋琢磨の日々、その経験の全てを養分として、背番号30は歩みを続けている。遡ること7か月、初めてリーグ戦でのベンチ入りを果たした夜。90分を見届けた横浜FM戦を終え、ルーキーはこう言っていた。「『出場した時のイメージはできていたか』と聞かれて『はい』と答えました。試合で、そう遠くない日に見ることができると思いますよ」。その言葉が単なる願望や根拠なき自信の表出ではなかったことを、安部は今まさに証明している。
強気でいて、それでいて傲慢さを全く感じさせないのは、自らの足下を見つめ、フットボールに真摯に向き合っているからこそ。描いた未来図を現実のものとし続ける若武者は、これからどんな高みへ到達するのだろう。どんな景色を見せてくれるのだろう。「チームの勝利のために、精一杯走ります」。走り続けた先で、誰よりも燦然と輝いた先で、世界がその名を知ることとなるはずだ。安部裕葵、18歳。進化の道のりに終わりはない。
正確なボールコントロールとしなやかに加速するドリブル、物怖じせずに前へ前へとボールを運ぶ姿勢――。思えばあの時から、その存在感は異彩を放っていた。2月4日、DAZNニューイヤーカップ第2戦。18回目の誕生日から1週間のルーキーが、寒空の宮崎で躍動した。調整段階のプレシーズンマッチとはいえ、不甲斐ない90分を過ごしてしまったアントラーズにあって、安部裕葵が放った輝きは鮮烈な印象を残した。
0-1で迎えた62分、まだ真新しい背番号30が姿を現す。「他の選手が疲れている中で、自分のところで仕掛けないといけないと思っていました」。その言葉通り、ワンタッチで前を向く積極性で相手の脅威となり続けた。幾度となく鳴り響いたホイッスルは、横浜FCが安部をファウルで止めるしか術を持たなかった証左だ。それでも若武者は「FKをもらうだけじゃなくて(マークを)剥がせないとダメですね。もっと顔を上げて、余裕を持たないと」と、己の突き詰めるべき道を明確に照らしていた。「何もしないよりは間違ったほうがいいですし、アクションを起こしたほうがいいと思っています」と、物怖じせぬ姿勢を貫いてスタジアムを後にした安部。その言葉を聞き、その振る舞いを目の当たりにした誰もが “彼の成長が楽しみだ”と思わずにはいられなかったに違いない。
果たして安部は、軽やかに、しかし一歩ずつ着実に階段を上ることとなった。4月1日、大宮戦でJ1デビュー。クラブ史上3番目の年少出場記録を刻んでみせた。昌子が「人とは違うドリブルをする選手。ここがスタートライン」とさらなる進化への期待を寄せれば、土居は「本当に良い選手だと思うので、上がってきてほしい」と早くも築かれつつあった信頼を語っている。

「あのようなプレーを表現できたのだから、どんなレベルでもどんな相手に対してもやり続けないといけない。感じたもの、得たものを表現し続けてほしい」。指揮官の期待を背負った安部は、その言葉を体現するかのように躍動を続けた。アンダルシアの雄を切り裂いた1週間後、J1初得点を記録。「レアンドロがワンツーで入ってきてくれて、その時点で勝負があったと言ってもいいくらい。自分はギアを上げる必要もなく、ジョギングくらいの感覚でスペースに走ったんです。レアンドロのパスが9割と言ってもいいほど、良いところに流してくれました」。その言葉を聞きながら、まるで映像を観ているかのような錯覚すら覚えた。初めて刻んだスコアの余韻を凌駕する、冷静沈着なプレー描写だった。
「自分ができることだけをして、それが結果につながればいいです」。背番号30は今や、アントラーズに不可欠な存在だ。9月のリーグ戦、連勝街道を突き進んだ日々にあって、指揮官は1枚目の交代カードに安部を指名し続けた。1点リードの大宮戦、1点を追う新潟戦、そして勝ち越しを目指すG大阪戦。置かれた状況が違ってもピッチに送り出されるのは、戦況を読む能力に揺るぎない信頼があるからこそ。「点を取らないといけない状況であれば取りにいくし、リードしている状況であれば前線からの守備をする。流れを見て判断したいと思います」。言うは易く、行うは難し――。3連勝という結果が、任務遂行の証だった。
「いつもとは違うピッチの状態で、相手の守備の人数も多くて…。自分なりにずっと考えていたんですけど、考えたまま試合が終わってしまいました。“これだ”と決めて、行動することができませんでした。まずは周りの選手を助けてあげるとか、もっとプレッシャーをかけたり、周りに声をかけたりする方が大事だと思うので、反省しています」
だからこそ、安部は失意の敗戦を悔やむ。9月30日の鳥栖戦。62分、この日も最初の交代選手としてピッチに立つと、突破口を見出そうと縦横無尽に駆けた。だが、求める結果を得ることはできなかった。「攻撃陣としては、無得点で終わってはダメですね」。底知れぬ悔しさとの狭間で「考える習慣は悪くないと思うので、下を向くことはないです」。変わらぬ姿勢を貫き、そして奮起を誓っていた。
「夢生さんと話をしたんです。僕よりも10年くらい(長く)やっているので、プレーに関することや選手、人としてのことを教えてもらいました。夢生さんだけじゃなく、いろいろな選手から教わっています。先輩によって言うことは違うけど、自分を持っているのが共通点。先輩たちは周りに流されていない。自分は芯が強いと言われますけど、柔軟性のある芯だと思う。自分にあったものを取り入れていきたいです」
実力者たちとの切磋琢磨の日々、その経験の全てを養分として、背番号30は歩みを続けている。遡ること7か月、初めてリーグ戦でのベンチ入りを果たした夜。90分を見届けた横浜FM戦を終え、ルーキーはこう言っていた。「『出場した時のイメージはできていたか』と聞かれて『はい』と答えました。試合で、そう遠くない日に見ることができると思いますよ」。その言葉が単なる願望や根拠なき自信の表出ではなかったことを、安部は今まさに証明している。
強気でいて、それでいて傲慢さを全く感じさせないのは、自らの足下を見つめ、フットボールに真摯に向き合っているからこそ。描いた未来図を現実のものとし続ける若武者は、これからどんな高みへ到達するのだろう。どんな景色を見せてくれるのだろう。「チームの勝利のために、精一杯走ります」。走り続けた先で、誰よりも燦然と輝いた先で、世界がその名を知ることとなるはずだ。安部裕葵、18歳。進化の道のりに終わりはない。

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