大宮戦の注目プレーヤーは、伊東幸敏!
「アントラーズというクラブは、最後のホイッスルが鳴るまで絶対に諦めてはいけないです。全員がそうだったと思います」
9月3日。24回目の誕生日を先発メンバー入りで飾った背番号24はしかし、喜びとともにスタジアムを後にすることはできなかった。2試合合計4-5。ルヴァンカップ敗退を意味する勝利は、何の充足感ももたらさない。この日も右サイドを駆けた。5ゴールが必要な苦境に追い込まれても、その疾走が突破口になると信じてボールを追い、希望を乗せたクロスを送り続けた。だが、求める結果を手にすることはできなかった。だからこそ誓う。リーグを獲る。結果を残してみせる――。
「最後に優勝できればいいと思っているので、その時に『この試合があったから』と言うことができればいいです」
8月13日。大岩監督就任後、初めての屈辱を味わった夜。等々力で喫した黒星、その悔しさと向き合いながら、伊東幸敏はタイトル獲得を誓っていた。「同じ相手に(2度)負けたことが悔しいです」。そう言った後、「でも…」と続けて紡がれた「優勝」の二文字。強い決意を言葉に託し、背番号24はミックスゾーンを後にした。
「自分が入って活性化したとは思っていません」と、伊東は険しい表情で敗戦を振り返った。しかしこの日に限らず、背番号24の登場がアントラーズに推進力をもたらしていることは紛れもない事実だ。77分からピッチに立つと、スピードに乗った勇敢なオーバーラップを連発した。出場直後の78分、スペースへ飛び出してフィードに反応。ヘディングで折り返して安部のボレーへつなげると、以降も攻撃参加を繰り返していく。3点を追う苦しい状況にあって、決定機を幾度となく演出。タッチライン際を積極果敢に疾走する姿は、チームに大いなる勇気を与えていた。
「50試合出場に関しては“割と長かったな”という感覚です。遅い方だと思いますし」
その8日前、8月5日。カシマスタジアムで勝利に貢献した伊東は、節目となるJ1通算50回目の出場を刻んだ。昨季までの5年間における出場数は0、6、12、8、13と推移。順風満帆とは言い難いだろう。激しいポジション争いに身を置いて、年間を通してレギュラーを獲得したと言えるシーズンはまだない。それでも伊東は己の課題と真摯に向き合い、着実に歩みを進めてきた。2013年10月、国立のピッチで刻んだ、プロフットボーラーとしての第一歩目。2014年、自身初の開幕スタメン、そして学生時代には未経験だった年代別代表への招集。2015年、プロキャリア初のチームタイトル。2016年、初めてのリーグ制覇――。華やかな道のりとは言えなくとも、一足飛びに駆けた瞬間がなくとも、伊東は一歩ずつ日々着々と、アントラーズでキャリアを築いてきた。
西と繰り広げるポジション争いは、リーグ屈指の水準だ。中盤での舵取りや攻撃的な任務さえも涼しい顔で遂行するテクニシャンと、豊富な運動量を武器に上下動を繰り返す“正統派”ラテラウの競争。伊東は「自分しか持っていないものがチームの武器になればいいと思っています」と言い、自信と決意を隠そうとはしない。事実、大岩監督の初陣となった6月4日の広島戦では先発メンバーに名を連ね、「最終ラインについては、安定した守備のできるスカッドだと思っているので、自信を持って送り出した」と言わしめている。
指揮官からの信頼は、その起用法にも表れている。就任後12試合を戦ったJ1で、伊東は8試合に出場。先発は2試合のみだが、試合終盤にピッチへ送り出される光景は今や日常と化した。「チャンスがあれば、積極的にボールホルダーを追い越していく」という大岩監督のコンセプトは、攻撃のスイッチを入れるジョーカー役として背番号24を見出したのだ。それだけでなく、痺れるような激闘をウノゼロで制した吹田での戦いのように、相手の左サイドを無力化する任務を課されることもある。まさに攻守両面で欠かせない存在。その貢献度は計り知れない。「サイドバックの途中出場は他のチームではあまり聞かないですけどね。でも、それで活性化できればいいと考えています」。例え、限られたプレータイムであっても、着々と進化を遂げる若武者は全てを誠実に受け止め、全てを糧にして前へと進んでいく。
加入6年目。その言葉には、鹿のエンブレムを胸に積み重ねてきた日々への誇りと自負が滲む。「アントラーズは、それでいいと思っているんです」と語ったのは、今季のACL初戦を2-0で制した後。内容に課題が残った90分を経て、「こういう試合で勝つことがアントラーズらしさでもあると思うんです。アントラーズはこれでいいんじゃないかと思うんです」。決して“どんな内容でもいい”という意味ではない。“タイトルを獲らなければ、評価されないのがアントラーズ――”。優勝を義務付けられて過ごした年月が、背番号24を突き動かしているのだ。セビージャFC戦の前もそうだった。「内容より結果を求めるのがアントラーズ。だから結果にこだわりたい」。アンダルシアの雄を前にしても、鹿のエンブレムを纏う誇りは揺るがなかった。
「タイトル獲得に少しは貢献できたと思っているけど、できれば優勝をピッチで味わいたかったですね。それを次のシーズンに向けた目標にしたいです」
19個目の星を歴史に刻んだ天皇杯。伊東は準々決勝と準決勝でフル出場を果たしながら、元日決勝の120分間はベンチで見届けることとなった。喜びと、悔しさ。去来する思いとともに、胸に宿るのは確固たる誓いだ。それを現実のものとするために、背番号24はトレーニングに打ち込み続けている。
2017年、残されたタイトルは2つ。J1は10試合、そして元日決勝まで14試合となった。今夜はJ1再開を告げる一戦だ。力強く再スタートを切るために、是が非でも勝利を収めなければならない。先発でも、途中出場でも――。背番号24は今夜もピッチを疾走する。結果だけを追い求めて、勝利だけを見据えて、聖地の右サイドを駆け抜ける。
9月3日。24回目の誕生日を先発メンバー入りで飾った背番号24はしかし、喜びとともにスタジアムを後にすることはできなかった。2試合合計4-5。ルヴァンカップ敗退を意味する勝利は、何の充足感ももたらさない。この日も右サイドを駆けた。5ゴールが必要な苦境に追い込まれても、その疾走が突破口になると信じてボールを追い、希望を乗せたクロスを送り続けた。だが、求める結果を手にすることはできなかった。だからこそ誓う。リーグを獲る。結果を残してみせる――。
「最後に優勝できればいいと思っているので、その時に『この試合があったから』と言うことができればいいです」
8月13日。大岩監督就任後、初めての屈辱を味わった夜。等々力で喫した黒星、その悔しさと向き合いながら、伊東幸敏はタイトル獲得を誓っていた。「同じ相手に(2度)負けたことが悔しいです」。そう言った後、「でも…」と続けて紡がれた「優勝」の二文字。強い決意を言葉に託し、背番号24はミックスゾーンを後にした。
「自分が入って活性化したとは思っていません」と、伊東は険しい表情で敗戦を振り返った。しかしこの日に限らず、背番号24の登場がアントラーズに推進力をもたらしていることは紛れもない事実だ。77分からピッチに立つと、スピードに乗った勇敢なオーバーラップを連発した。出場直後の78分、スペースへ飛び出してフィードに反応。ヘディングで折り返して安部のボレーへつなげると、以降も攻撃参加を繰り返していく。3点を追う苦しい状況にあって、決定機を幾度となく演出。タッチライン際を積極果敢に疾走する姿は、チームに大いなる勇気を与えていた。

その8日前、8月5日。カシマスタジアムで勝利に貢献した伊東は、節目となるJ1通算50回目の出場を刻んだ。昨季までの5年間における出場数は0、6、12、8、13と推移。順風満帆とは言い難いだろう。激しいポジション争いに身を置いて、年間を通してレギュラーを獲得したと言えるシーズンはまだない。それでも伊東は己の課題と真摯に向き合い、着実に歩みを進めてきた。2013年10月、国立のピッチで刻んだ、プロフットボーラーとしての第一歩目。2014年、自身初の開幕スタメン、そして学生時代には未経験だった年代別代表への招集。2015年、プロキャリア初のチームタイトル。2016年、初めてのリーグ制覇――。華やかな道のりとは言えなくとも、一足飛びに駆けた瞬間がなくとも、伊東は一歩ずつ日々着々と、アントラーズでキャリアを築いてきた。
西と繰り広げるポジション争いは、リーグ屈指の水準だ。中盤での舵取りや攻撃的な任務さえも涼しい顔で遂行するテクニシャンと、豊富な運動量を武器に上下動を繰り返す“正統派”ラテラウの競争。伊東は「自分しか持っていないものがチームの武器になればいいと思っています」と言い、自信と決意を隠そうとはしない。事実、大岩監督の初陣となった6月4日の広島戦では先発メンバーに名を連ね、「最終ラインについては、安定した守備のできるスカッドだと思っているので、自信を持って送り出した」と言わしめている。
指揮官からの信頼は、その起用法にも表れている。就任後12試合を戦ったJ1で、伊東は8試合に出場。先発は2試合のみだが、試合終盤にピッチへ送り出される光景は今や日常と化した。「チャンスがあれば、積極的にボールホルダーを追い越していく」という大岩監督のコンセプトは、攻撃のスイッチを入れるジョーカー役として背番号24を見出したのだ。それだけでなく、痺れるような激闘をウノゼロで制した吹田での戦いのように、相手の左サイドを無力化する任務を課されることもある。まさに攻守両面で欠かせない存在。その貢献度は計り知れない。「サイドバックの途中出場は他のチームではあまり聞かないですけどね。でも、それで活性化できればいいと考えています」。例え、限られたプレータイムであっても、着々と進化を遂げる若武者は全てを誠実に受け止め、全てを糧にして前へと進んでいく。
加入6年目。その言葉には、鹿のエンブレムを胸に積み重ねてきた日々への誇りと自負が滲む。「アントラーズは、それでいいと思っているんです」と語ったのは、今季のACL初戦を2-0で制した後。内容に課題が残った90分を経て、「こういう試合で勝つことがアントラーズらしさでもあると思うんです。アントラーズはこれでいいんじゃないかと思うんです」。決して“どんな内容でもいい”という意味ではない。“タイトルを獲らなければ、評価されないのがアントラーズ――”。優勝を義務付けられて過ごした年月が、背番号24を突き動かしているのだ。セビージャFC戦の前もそうだった。「内容より結果を求めるのがアントラーズ。だから結果にこだわりたい」。アンダルシアの雄を前にしても、鹿のエンブレムを纏う誇りは揺るがなかった。
「タイトル獲得に少しは貢献できたと思っているけど、できれば優勝をピッチで味わいたかったですね。それを次のシーズンに向けた目標にしたいです」
19個目の星を歴史に刻んだ天皇杯。伊東は準々決勝と準決勝でフル出場を果たしながら、元日決勝の120分間はベンチで見届けることとなった。喜びと、悔しさ。去来する思いとともに、胸に宿るのは確固たる誓いだ。それを現実のものとするために、背番号24はトレーニングに打ち込み続けている。

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