ムアントン戦の注目プレーヤーは、三竿雄斗!
「今までは遠慮していた部分もあったので、もっとがむしゃらにやっていきたいです。球際や走力でも相手を上回らないと」
5月5日。埼玉スタジアムで浦和を破り、歓喜の時を迎えた翌日。つかの間のオフを利用して、三竿雄斗は永木とともに湘南の地を訪れていた。昨季までプレーした古巣のトレーニングを目の当たりにし、かつてのチームメイトと旧交を温める。「ある意味、自分の原点ですね」。慣れ親しんだ風景を養分に、雄斗は決意を新たに鹿嶋へと帰ってきた。
プロフットボーラーとして初めての移籍を決断し、鹿のエンブレムを胸に迎えた2017年。その道のりは決して、順風満帆なものとは言えない。公式戦出場はわずか3試合、プレータイムは206分のみ。昨季までの3年間でリーグ戦105試合に出場してきた26歳にとって、不甲斐なさと悔しさばかりが募る日々だ。
「早くプレーで信頼を勝ち取りたいと思います」。そう語ったのは、1月に行われたタイキャンプの時だった。「実戦をこなしながら、コンディションと戦術理解度を同時に高めていく」という指針を打ち出した指揮官の下、雄斗はプレシーズンマッチでフル稼働。タイと宮崎での全5試合でピッチに立ち、「自分にできることを100%でやり続けたいです」と、アントラーズの約束事を身体に染み込ませようと腐心していた。「慣れていきたい」「覚えていきたい」。そんな言葉を繰り返しながら、カシマスタジアムを疾走する己の姿を思い描きながら、ひたむきにトレーニングに打ち込んでいた。
2月18日、FUJI XEROX SUPER CUP。今季最初の公式戦で、背番号15は先発メンバーに名を連ねた。日産スタジアムでのプレータイムは、82分。アントラーズでの初タイトルをキャリアに刻んだ後、雄斗は「2失点目の時は相手との距離を開けすぎてしまったので、そこは反省点です。湘南の時よりもサイドでの1対1の攻防をする回数が増えると思いますけど、感覚は掴めています」と、静かに振り返っていた。新天地での第一歩を踏み出した手応えと、自分のサイドから上げられたクロスで同点弾を許した悔しさ。相反する感情が胸に去来していたに違いない。
しかもこの試合、自身との交代で山本が実戦復帰を果たしている。アントラーズで不動の地位を築き上げている背番号16がピッチに帰還した瞬間は、真の意味での定位置争いが幕を開けた合図でもあった。「しっかりと我慢をして勝ち切るのがこのクラブの伝統だと思いました」と、噛み締めるように語っていた雄斗。ACLとJ1の開幕を目前にして、静かに闘志を燃やしていた。
だが、待っていたのは険しい道のりだった。浦和戦の3日後、ACL初戦の蔚山現代戦。指揮官が左サイドを託したのは雄斗ではなく、山本だった。昨季2冠の立役者は、復帰後初のフル出場で勝利に貢献。実戦から遠ざかる日々が続いていたことを感じさせない、安定感に満ちたプレーを披露した。雄斗はベンチにも入ることができず、その様子をスタンドから見届けた。
さらに4日後のJ1開幕戦。ベンチ入りを果たした雄斗は、西の負傷というアクシデントによって戦いの場へ足を踏み入れた。しかし結果は、0-1。アントラーズの一員として初めてプレーしたカシマスタジアムで、オウンゴールを記録してしまった。「精神的にはきついですけど…」。そう絞り出しつつ、「切り替えて準備をして、チームに貢献したいです」と、次なる戦いを見据えた。
下を向く間もなく迎えた、ACL第2節。中3日で迎えたムアントンとのアウェイゲームで、雄斗はフル出場を果たした。しかしスコアは、1-2。自身が出場した試合で、勝利という結果を出せない――。厳しい現実と向き合いながら、帰国の途に就くこととなった。チーム全員で戦い、チーム全員で責任を負うということは言うまでもないが、新戦力としての立場を考えた時、その事実が重くのしかかってしまう。「もったいない試合だった」。その言葉に、悔しさが滲んだ。
そしてこの日を最後に、時計の針は止まってしまった。負傷の影響で別メニュー調整を強いられ、ベンチ入りすら叶わない日々。4日の浦和戦は実に12試合ぶりのメンバー入りだった。「ようやく治って、コンディションも上がってきました」。埼玉スタジアムのピッチに立つことはできなかったが、着実に歩みを進めてきたことは間違いない。「チームにも慣れたし、もうやらないとダメです」と不退転の決意を口にした。厳しい寒さの中で繰り返された「慣れていきたい」という言葉は、初夏の訪れを感じさせる日差しの下で「慣れた」に変わった。
「どんな試合であっても、このエンブレムをつけている以上は勝たないといけないです」。宮崎でのプレシーズンマッチを前に、アントラーズのユニフォームを纏う意味を語っていた雄斗。いま一度、その言葉を思い返す。グループステージ突破が決まった状態で迎える、聖地での90分。どんな試合でも、目指すものは勝利のみ――。空白の時に終止符を打つべく、雄斗は静かに牙を研いでいる。アントラーズのスピリットを体現した先に、時計の針を再び動かし始めたその先に、今度こそ歓喜が待っていると信じて。
5月5日。埼玉スタジアムで浦和を破り、歓喜の時を迎えた翌日。つかの間のオフを利用して、三竿雄斗は永木とともに湘南の地を訪れていた。昨季までプレーした古巣のトレーニングを目の当たりにし、かつてのチームメイトと旧交を温める。「ある意味、自分の原点ですね」。慣れ親しんだ風景を養分に、雄斗は決意を新たに鹿嶋へと帰ってきた。
プロフットボーラーとして初めての移籍を決断し、鹿のエンブレムを胸に迎えた2017年。その道のりは決して、順風満帆なものとは言えない。公式戦出場はわずか3試合、プレータイムは206分のみ。昨季までの3年間でリーグ戦105試合に出場してきた26歳にとって、不甲斐なさと悔しさばかりが募る日々だ。
「早くプレーで信頼を勝ち取りたいと思います」。そう語ったのは、1月に行われたタイキャンプの時だった。「実戦をこなしながら、コンディションと戦術理解度を同時に高めていく」という指針を打ち出した指揮官の下、雄斗はプレシーズンマッチでフル稼働。タイと宮崎での全5試合でピッチに立ち、「自分にできることを100%でやり続けたいです」と、アントラーズの約束事を身体に染み込ませようと腐心していた。「慣れていきたい」「覚えていきたい」。そんな言葉を繰り返しながら、カシマスタジアムを疾走する己の姿を思い描きながら、ひたむきにトレーニングに打ち込んでいた。
2月18日、FUJI XEROX SUPER CUP。今季最初の公式戦で、背番号15は先発メンバーに名を連ねた。日産スタジアムでのプレータイムは、82分。アントラーズでの初タイトルをキャリアに刻んだ後、雄斗は「2失点目の時は相手との距離を開けすぎてしまったので、そこは反省点です。湘南の時よりもサイドでの1対1の攻防をする回数が増えると思いますけど、感覚は掴めています」と、静かに振り返っていた。新天地での第一歩を踏み出した手応えと、自分のサイドから上げられたクロスで同点弾を許した悔しさ。相反する感情が胸に去来していたに違いない。
しかもこの試合、自身との交代で山本が実戦復帰を果たしている。アントラーズで不動の地位を築き上げている背番号16がピッチに帰還した瞬間は、真の意味での定位置争いが幕を開けた合図でもあった。「しっかりと我慢をして勝ち切るのがこのクラブの伝統だと思いました」と、噛み締めるように語っていた雄斗。ACLとJ1の開幕を目前にして、静かに闘志を燃やしていた。
だが、待っていたのは険しい道のりだった。浦和戦の3日後、ACL初戦の蔚山現代戦。指揮官が左サイドを託したのは雄斗ではなく、山本だった。昨季2冠の立役者は、復帰後初のフル出場で勝利に貢献。実戦から遠ざかる日々が続いていたことを感じさせない、安定感に満ちたプレーを披露した。雄斗はベンチにも入ることができず、その様子をスタンドから見届けた。

下を向く間もなく迎えた、ACL第2節。中3日で迎えたムアントンとのアウェイゲームで、雄斗はフル出場を果たした。しかしスコアは、1-2。自身が出場した試合で、勝利という結果を出せない――。厳しい現実と向き合いながら、帰国の途に就くこととなった。チーム全員で戦い、チーム全員で責任を負うということは言うまでもないが、新戦力としての立場を考えた時、その事実が重くのしかかってしまう。「もったいない試合だった」。その言葉に、悔しさが滲んだ。
そしてこの日を最後に、時計の針は止まってしまった。負傷の影響で別メニュー調整を強いられ、ベンチ入りすら叶わない日々。4日の浦和戦は実に12試合ぶりのメンバー入りだった。「ようやく治って、コンディションも上がってきました」。埼玉スタジアムのピッチに立つことはできなかったが、着実に歩みを進めてきたことは間違いない。「チームにも慣れたし、もうやらないとダメです」と不退転の決意を口にした。厳しい寒さの中で繰り返された「慣れていきたい」という言葉は、初夏の訪れを感じさせる日差しの下で「慣れた」に変わった。
「どんな試合であっても、このエンブレムをつけている以上は勝たないといけないです」。宮崎でのプレシーズンマッチを前に、アントラーズのユニフォームを纏う意味を語っていた雄斗。いま一度、その言葉を思い返す。グループステージ突破が決まった状態で迎える、聖地での90分。どんな試合でも、目指すものは勝利のみ――。空白の時に終止符を打つべく、雄斗は静かに牙を研いでいる。アントラーズのスピリットを体現した先に、時計の針を再び動かし始めたその先に、今度こそ歓喜が待っていると信じて。

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