注目のキープレーヤーは、鈴木優磨!

 「出場した試合で“自分は何かができる”ということを示さないといけない。結果を出し続けるしかない。このポジション争いを勝ち抜けば、リーグ屈指のFWになれると思っているから」

 プレシーズンマッチ、5試合出場5得点。ピッチに立つたびに、ゴールネットを揺らしてみせた。その言葉を己のプレーで体現し、胸に宿る決意を示し続けた。鈴木優磨、20歳。プロ入り3年目、背中に輝く“9”とともに、飛躍のシーズンが始まる。

 2016シーズン、優磨は公式戦で計11ゴールを決めた。リーグ戦は全34試合中、31試合に出場。チャンピオンシップ決勝第2戦では、決勝ゴールとなるPK獲得で優勝の立役者となった。クラブワールドカップでは南米王者の息の根を止める一撃を決め、ゴールセレブレーションの様子が世界中に発信された。“2年目のジンクス”など、この貪欲な若武者には全くの無縁。今や、アントラーズになくてはならないアタッカーの一人だ。
 そして迎えた、2017年。積極的な戦力補強を敢行し、全タイトル制覇を掲げたクラブは、優磨に大きな期待と責任を託した。背番号、9――。黒崎比差支、鈴木隆行、平瀬智行、そして大迫勇也。かつてこの番号を背負った日本人ストライカーは、全員が日の丸を纏ってプレーしている。輝かしき歴史、その新たなる継承者に選ばれたのは、小学1年生の時から鹿のエンブレムを胸に走り続けてきた20歳だった。ユース時代の「11」も印象強いが、ジュニアから生え抜きのストライカーは「9」を背負った経験もある。アントラーズとともに歩みを続け、15年目でついにトップチームのエースナンバーを託されることとなった。優磨は「ありがたいことです」と、珍しく言葉少なに、その重みを噛み締めていた。

 ルーキーイヤーから公式戦に出場し、2年で3つのタイトルを獲得した。3年目で9番を託された。周囲から見れば、そのキャリアは順風満帆と言えるかもしれない。だが、優磨の胸に充足感など宿らない。2月11日、水戸ホーリーホック戦。先発メンバーから外れた一戦、途中出場で1ゴールという結果を出しても、「今日、スタメンから外されたことがすごく悔しかった。その悔しさをぶつける気持ちでピッチに立った」と、険しい表情で言葉を並べていた。タイと宮崎での4試合で4得点を挙げていたが、「公式戦前の最終チェック」と位置付けられた一戦で、キックオフのホイッスルをピッチで聞くことはできなかった。その悔しさが、20歳の闘争心に火をつけた。

「それに関しては本当に嫌。非常に嫌です。使い勝手のいい選手になっちゃいけないと思っているので」

 昨季の活躍で、“戦況を打開するジョーカー”としての地位は確立したと言ってもいいだろう。交代ボードとともに、優磨がタッチライン際に立った時の期待感はチーム随一だ。だが、本人は“スーパーサブ”としてのイメージが定着することを嫌う。「途中出場に甘んじるつもりはないので、スタメンを狙いに行く」。先発メンバーに名を連ねるために、進化を目指す日々が続く。

「今は点を取っているけど、石井さんの中では他の部分が劣っているということなのだと思う。何がいけないのかを探して、模索している段階。切り替えの速さはまだまだだし、守備は課題。点を取るだけじゃなくて、試合を作ることも求められると思う。とにかく先発で出たい。その気持ちがすごく強い」

 貪欲な姿勢を隠さない優磨について、指揮官は「彼の強みをどのタイミングで出せばいいか、非常に悩んでいる」と明かしている。それは決して、「使い勝手がいい」選手への道を歩んでいるということではない。底知れぬポテンシャルゆえ、指揮官を悩ませるほどに選択肢が広がっているということだ。先発出場か、ベンチスタートか。FWか、サイドハーフか。優磨は今、状況に応じて変化するタスクを「ポジティブに」受け止め、トレーニングに打ち込んでいる。その全てが、進化への糧になるはずだ。
 さあ、2017シーズンがいよいよ始まる。聖地・カシマスタジアムでのオープニングゲームは、ACLの開幕戦・蔚山現代FCとの激突だ。優磨にとって、ACLは初めて足を踏み入れる舞台。「このクラブが持っていないタイトル。何としても獲りたい。こういう大会は技術よりも気持ちが大事だと思う。気持ちが強いチームが勝つと思う」。鹿のエンブレムとともに歩み続けてきた背番号9の継承者は、アントラーズが味わってきた悔しさの数々を身をもって知っている。だからこそ誓う。自分のプレーで、歴史を変えてみせる――。

「初ゴールと勝ち点3を交換できるなら、ゴールなんていらない」。2015年9月12日、ガンバ大阪戦。今も強い印象とともにある、プロデビュー戦での初ゴール。そして、アントラーズサポーターの琴線に触れた、この言葉――。あの夜から1年半、力強く道を切り開いてきた若武者は、これからも貪欲に走り続ける。「アントラーズの歴史に残る選手になりたい」。その思いを現実のものにするために。新たに纏う背番号9を、燦然と輝かせるために。
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