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 今季最終戦となる日曜日のホーム横浜FC戦を前に、クォン スンテの現役引退が発表された。2017年の加入以来、ピッチ内外でチームを支え続けてきた「長兄」がついにそのキーパーグローブを置く。手放しで賞賛できるプロキャリアを積み重ねてきた、この偉大なるゴールキーパーの引退は年齢的に言っても、自然のことかもしれない。頭では理解ができるが、まだまだスンテがアントラーズのゴールを守る姿を見たかった。これがアントラーズファミリー全員の素直な気持ちだ。

 2017年1月、32歳のスンテはアントラーズへの移籍を決意した。2度のACL制覇、3年連続Kリーグベストイレブンなど輝かしい経歴を持ち、母国ではレジェンドの1人に数えられていたにもかかわらず、あえて選んだ海外挑戦。その決意には並々ならぬものがあったことだろう。

 それからスンテは瞬く間に私たちの心をつかんだ。当時のファーストGKだった曽ケ端(現ユースGKコーチ)とも切磋琢磨しながら、自らの力でつかんだアントラーズの守護神の座。しかし、ポジションを得たからと言って、傲慢なそぶりは一切ない。曽ケ端も、「スンテのおかげで、自分も『まだこの歳になっても、成長できるんだ』と感じ、努力を続けることができた。ある意味、僕の現役生活を伸ばしてくれたと思う」と以前、感謝の意を述べていた。それだけ、スンテの存在はピッチ内外でチームメートへ大きな影響を与えてきた。

 そしてそれは、スタッフやファン・サポーターにとっても同様だ。ピッチ上では鬼神のようなプレーを見せつつ、ひとたびピッチの外へ出ると、とびきりの笑顔と丁寧な日本語で接してくれた。「おはようございます!元気ですか?」。その気遣いに、自然と笑顔になったスタッフも多い。もちろん、ファン・サポーターの皆さんにもそんな思い出があることだろう。

 アントラーズのスンテが現役を引退する。最後の舞台となるのは、2023シーズン最終戦を戦うカシマスタジアム。ここ6試合未勝利ともがき苦しむアントラーズだが、ホームであるカシマでスンテとともに戦えるのは、日曜日の試合が最後だ。この状況で、言葉はもういらない。

 偉大なる長兄と、最後の最後まで戦う。すべては、勝利のために。

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