PREVIEW

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 前節、アントラーズは柏をカシマスタジアムに迎え、リーグ第32節を戦った。結果は、1-1のドロー。9月16日のホームC大阪戦(1-0)を最後に勝利を得ていないアントラーズと、J1残留のため、勝ち点をできるだけ積み重ねたい柏との一戦は、お互いが「絶対に勝ちたい」という気持ちからか、互いにミスを極度に恐れる消極的な試合展開となってしまった。

 これでアントラーズは5戦未勝利。試合後の選手たちには、もちろん引き分けで終わったという安堵感はない。ただただ、自分たちの不甲斐なさを悔やむ気持ちがそれぞれの顔から読み取れた。

 あれから2週間の中断期間を経て、アントラーズは敵地で川崎Fと対峙する。その間、偉大なるレジェンズのひとりである本山雅志アカデミースカウトの引退試合も行われた。「モトフェス」と称され、アントラーズのみならず、他クラブのレジェンズも一堂に会したこの試合は、本山アカデミースカウトの人柄通り、本当に明るく楽しいひと時となった。

 現役選手として「モトフェス」に参加した柴崎は、「(怪我から復帰期間中で)出場はできなかったけど、モトさんをはじめ、歴代の錚々たる先輩たちのプレーを改めて見て、『楽しそう』『うまいな』と感じた。タクさん(野沢拓也)も細かいところとか、全く変わっていないし、みんな、それぞれの味がある。『フットボールっていいな』ともう一度、強く感じられたかけがえのない時間だった」と語った。

 また土居も、「モトさんやタクさんとまたプレーできて、心の底から『楽しい』と思えた出場時間。秒ごとにワクワクするし、本当に楽しかった。『これ、これ!』という感じだった」と言う。ベンチで見ていた柴崎も、「聖真、ホントに楽しそう」と感じたそうだ。

 そして最終ラインで先輩や盟友たちが楽しそうにプレーするのを眺めながら、自らもプレーした昌子は、「モトさんが前から言ってくれていた『楽しもうよ』って、これやなと。本来、フットボールは楽しいもの。楽しくやるから、うまくなるし、強くなる。それを改めてモトさんをはじめ、先輩たちに教えてもらえた気がする」と言った。

「どこか、そんな気持ちを置いてきて、ここまで戦ってきたかも。まずは自分たちが楽しくやる。それがファン・サポーターにも伝わって、また熱くなってもらえる。勝ち負けというだけではなく、一つひとつのプレーに結果だけを求めていたかもしれない」

 本山をはじめ、偉大な先人たちとの時間を経て、アントラーズの伝統を肌で知る3人は一様に同じ気持ちを語ってくれた。ボールをさわるとき、本来感じていたはずの感情をまた再び揺り動かされ、次の戦いへと挑む。

 対戦相手は、川崎F。相手に不足はない。明日の等々力では、躍動するアントラーズが観たい。

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