PREVIEW
今を遡ること1ヶ月、チームは苦しみの最中にいた。ホーム神戸戦で1-5の大敗を喫し、リーグ戦では4連敗。試行錯誤を繰り返したものの、結果が伴わず、一時は順位を15位まで下げた。岩政監督は当時を振り返ってこう語る。
「『試合の勝ち方』と『フットボールのやり方』を両立させるのはとても難しい。こういうポジションを取って、こういうフットボールをして、こういう風に相手の逆を取って...と、チームをつくろうとすると、大半のチームは『試合の勝ち方』が抜け落ちてしまう。これはどのチームでもよく見られる現象だと思うし、うちにとっても、それがあったのかもしれない」
それでも、4月23日のアウェイ新潟戦で浮上のきっかけを掴んだ。理想的ではなかったが、現実とうまく折り合いをつけ、『試合の勝ち方』を徹底して意識づけた。原点に立ち返った効果はてきめん。ボールを保持する新潟に対し、全員で粘り強く守り、勝ち点3を掴み取った。この1勝が選手たちに大きな自信をもたらした。
立ち返る場所が出来たことで、ここから試合を重ねるごとに自信が深まった。ホームでG大阪に4-0で快勝すると、札幌には1-0で苦しい試合を勝ち切る。そして、直近のC大阪戦も、悪天候にうまく適応し、セットプレーで奪った虎の子の1点を全員で守り抜いた。これで4試合連続の完封勝利。岩政監督も「しっかりと『試合の勝ち方』(にフォーカスして)、タイミングや時間帯、『この瞬間でここを抑えなければいけない』というところをみんなが嗅ぎ分けて、しっかり守備をした。そして、『ここがチャンスだ』というところで、しっかりゴールに結びつけた。アントラーズが本来持っていた『試合の勝ち方』を今の選手たちが身につけつつある」と、手応えを口にしていた。
だが、我々の目標はあくまでタイトルの奪還。現状に満足することはできない。結果が伴い、手応えを感じる今だからこそ、全局面で相手を圧倒できるフットボールを創る必要がある。岩政監督も「もっと自分たちが『気持ちのいい戦い』で勝ちに持っていくフェーズへいきたい」と語り、「少しずつ取り組んでいる部分だが、勝っている間にアップデートしていくことが大事だと思って、トレーニングしている」と話した。勝ちながら成長すること。それが今のチームに求められている。
そして、次は国立競技場で開催される「Jリーグ30周年記念スペシャルマッチ」に臨む。アントラーズにとって国立競技場は、2000シーズンに達成した史上初の三冠をはじめ、実に9個もの国内3大タイトル獲得を果たした栄光の地。同時に、1993シーズンのチャンピオンシップから2020年元日の天皇杯決勝に至るまで、悔しい記憶が数多く残っている場所でもある。1999年から2001年にかけてのカシマスタジアム改修期間中のホームゲームや2011年の東日本大震災後に公式戦再開を迎えた舞台も、国立だった。
悲喜こもごもの思い出が刻まれたこの地で、再び相まみえるのがJリーグ開幕戦の相手・名古屋グランパス(当時は名古屋グランパスエイト)。幾多もの激闘を繰り広げてきた「オリジナル10」同士の対決となる。
今シーズンの名古屋は、第12節終了時点で暫定3位と好調を維持しており、ここまでリーグ戦でわずか1敗しかしていない。名古屋の最大の武器は、就任2年目の長谷川健太監督が構築した堅固な守備。失点数はリーグ最少タイとリーグ屈指の守備力を誇る。我々も名古屋も、堅守を武器とするチームだけに、堅い試合展開になることも予想される。ただ、順位を上げるために求められるのは勝ち点3のみ。名古屋の守備を打ち破り、この上位対決を制する必要がある。