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 不完全燃焼に終わった加入1年目の昨季から一転、今シーズンはアルトゥール カイキの活躍が光る。チームメートとの連係が深まり、レネ監督が目指す強度の高いフットボールにも上手くフィットした。今季ここまでを振り返って、自信に満ちた表情でこう語る。

「昨季との違いは、しっかりと準備期間を設けられたことが大きい。また、ここまで連続して試合に出続けていることが、安定したパフォーマンスに繋がっていると思う。このリズムを継続できれば、残りのシーズンはもっとチームを助ける働きができると確信している」

 『準備』の大切さと『継続』の必要性を語ってくれたカイキ。これは5月に一時来日したジーコCAからも伝えられていた言葉だった。

「ジーコさんには、『良い状態(コンディション)で、良い時間を過ごせていることは、とても良いことだね』と声をかけてもらった。そして、『その良い状態を継続することこそが大事なんだ』と話してもらった。その言葉は僕の心に響いた。スタメンに名を連ねてもおかしくないメンバーが、ベンチに控えている。高い競争が出来ていることは、チームにとって、とても良いこと。ジーコさんに言われたとおり、パフォーマンスを落とさないことが大事だと思う」

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 ジーコCAからもらった言葉を胸に、カイキは努力を続ける。いつも陽気で明るい性格だが、フットボールに対する向き合い方は実に真摯で真面目そのもの。プロフェッショナルな姿勢が無ければ、連戦の中で強度を落とさず戦うことは不可能だ。

「中3日であれば、個人的には十分、体を回復する時間はあると思う。ただ、戦術的な部分やチームの約束事をトレーニングする時間は、実質的にない。それでも、監督は相手の長所と短所を非常にわかりやすく説明してくれるし、ピッチ内で流動的な動きやポジションチェンジを制限なくさせてもらえる。僕としてはとてもやりやすい環境だよ」

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 カイキの献身性は、ピッチ外だけでなく、プレーにも現れる。しっかり自陣まで戻って、守備に参加する姿は、今や当たり前の光景だ。

「失点の多くは20分~30分を過ぎてから。それまでは自分たちのペースで試合を進められているのに、一瞬の隙を相手に突かれてしまったり、集中が途切れてしまったりして、失点することが多い。その解決策としては、いかにして僕ら前線の選手たちがファーストディフェンスで相手を追い込めるか。また、そのファーストディフェンスが突破されてしまったときには、ゴール前にボールを運ばれるまでに相手を止めることができるか。ときにはプロフェッショナルファウルで止めることが必要かもしれないし、ときには一度、引いて、みんなで守ることが必要かもしれない。臨機応変に戦うことが大事になると思う」

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 ただ、献身性も彼の魅力の一つだが、やはり最大の武器は攻撃面にある。自陣からカウンターでスプリントできる走力。そして、何と言っても空中戦の強さは目を見張るものがある。ヘディングでのゴール数はリーグ1位。身長は174cmとそれほど高いわけではないが、卓越した跳躍力と空間認知能力、巧みなポジション取りにより、駆け引きで相手DFを上回ることができる。上背のないカイキの“高さ“は、いまやチームにとって欠かせない武器の一つだ。

「セットプレーから得点を決めていることで、最近は相手のマークも厳しくなっていると感じる。ただ、関川選手や三竿選手も高さがあるし、樋口選手が蹴るボールの特長もみんな把握している。今後はセットプレーからの得点も、もっと増えていくと思う」

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 上田綺世がベルギー移籍でチームを離れた今、カイキにはより多くのゴールと役割が求められる。そんな一身に背負う期待をカイキはとても楽しみながら戦っている。

「過密日程の中で、チーム力も問われる。チームの質を落とさないために、全員が力を発揮するための準備をしておく必要がある。もちろん、正直に言えば、連戦はきついけれど、我々が目指す目標に到達するためには、連戦もすべて乗り越える必要がある。それを乗り越えれば、目標に近づけるはずーー。その中で、ファン・サポーターの皆さんの後押しは非常に心強い。12番目の選手だと、僕たち選手も認識している。僕たちが皆さんにできることは、勝利への思いや決定的なチャンスを多く作る姿勢を見せて戦うこと」

 タフな戦いの連続を乗り越えてこそ、最高の歓喜が待っている。アルトゥール カイキはこれからも目の前の一戦に最善の準備を尽くし、勝利のために戦い続ける。

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