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 昨シーズンの終盤、関川郁万は目覚ましい成長を遂げた。プロ入りからの2年間は雌伏の時を過ごしたが、弛まぬ努力でついに才能が開花。そして、プロ4年目を迎えた今季は、前半戦だけですでにキャリアハイとなるリーグ戦16試合に出場。これまでの経験を糧に、出場機会をがっちりと掴み取った。

 プレーヤーは試合に出ることで真の意味での成長を遂げる。ピッチ上で真剣勝負を繰り返す中で、読みの鋭さが培われ、成功体験が自信に繋がっていく。もちろん、CBは失点に繋がるミスを犯すこともあるが、それを乗り越えることが、何事にも動じないメンタリティを培い、チームを統率するリーダーシップへ繋がる。アントラーズの歴史を築いた偉大なCBたちも皆、実践経験を糧に成長を遂げてきた。

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 関川はまさにその過程にいる。本人もその自覚を次のように話してくれた。

「昨年は試合に絡めなかった時期が長かった。だからこそ、試合に出る重要性、経験を積む重要さは、今、身にしみて感じている。試合に出るからこそ、成功体験があるし、失点に絡むこともある。すぐ改善できる課題もあるけれど、ミスに対して、長期的に成長していくことも大切だと思う。自分の良さを出しつつ、チームの勝利に貢献していきたい」

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 圧倒的な身体能力を武器に同年代の選手を蹂躙していた高校時代から、プロ入り後の悔しい3年間を経て、意識に大きな変化が生まれた。今季序盤に無失点が続いたときも、謙虚さを失わず、「自分の力というよりは、まだまだスンテさんや沖くんに助けられている部分が多い。もっと個人として、うまく守れる部分はあると思う。試合ごとに成長する姿を見せていきたい」と冷静に話していた。継続して出場できるようになった今も、彼から慢心や驕りは見られない。

 5月に入ると、公式戦での失点が続いたが、レネ監督からの信頼は変わらなかった。「関川選手に関しては若い選手。CBは本来、経験値を問われるポジションであり、まだ彼は成長段階にいる。やはり失点を多く繰り返すと批判されることはあるだろうけど、彼は悪いプレーばかりではなく、いいプレーも示してくれている」と、関川の起用を継続し、成長を促した。

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 指揮官からの期待に、関川はしっかりと応えてみせた。6月18日のリーグ第17節・京都戦。チームとして公式戦11試合ぶりの完封勝利に貢献した。試合後の表情を見ても、重圧を乗り越え、クリーンシートを達成できた安堵感が痛いほど伝わってきた。

「無失点での勝利は特にうれしい。公式戦11試合ぶりに無失点で試合を終えることができてよかった。ここまでを振り返ると勝ち切れなかった試合、勝ち点1も奪えなかった試合がたくさんあった。シーズン後半は安定して勝ち点を積み重ねられるようにしていきたい」

 実践での成功と失敗を繰り返し、彼の言葉からは守備者としての矜持が感じられるようになった。リーグはここから後半戦。安定して勝ち点を積み重ねるためには、守備の安定、ひいては関川の成長が必要不可欠になる。

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「ここ最近、CBとして、失点数が多いことが気になっていたし、自分のミスからの失点もあった。ただ、チームとして失点を誰か個人のせいにすることはないし、誰がミスしても全員でカバーできるようにしなければいけない。みんなで守備の改善に取り組んでいく」

 そのポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。「アントラーズのCB」として、歴史に名を刻む選手になるために。21歳の若武者が後半戦でどれほどの飛躍を遂げるのか。関川郁万の成長がタイトル奪還の鍵を握る。

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