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 あの日の笑顔を忘れられない。2018年10月3日、ACL準決勝第1戦のホーム水原三星戦。2点のビハインドを跳ね返して迎えた試合終了間際、内田が起死回生の逆転弾を決めた。あのゴールがなければ、クラブの宿願だったアジア初制覇は成し遂げられなかった。

 2018年にアントラーズへ復帰してからは怪我に悩まされた。だが、フットボールへ真摯に取り組む姿勢、そのメンタリティーは、チームメートに大きな影響を与え続けていた。

 さまざまな逆境を乗り越え、成長を積み重ねてきたことで、後輩選手たちの現在地がわかるようになった。「まだあの選手は見えていないな、この選手はいいもの持っているな、とか。俺も年を取ったからね。これまで周りに助けられてきたから。自分もそういう役割をしないとーー」。昔の自分と重ね合わせて、若手選手を見るようになった。

「アントラーズの空気感や伝統というものを、ここで終わらせたくない。いい形で下の世代にも伝えていかないといけない」

 伝統の継承。これを自らの使命と捉えた。「伝統をつないでいかないといけないというのはヒシヒシ感じるし、しっかり受け止めている。だから、その意味では立場や責任が今の自分を奮い立たせてくれる」。史上初のJリーグ3連覇を達成した当時の経験、そして、世界のトップレベルでもまれた経験を若手選手に惜しむことなく還元した。

「選手が変われば、チームの空気というか、雰囲気もガラッと変わる。優しい選手も多いし、優勝争いに慣れていない選手も多い。ただ、ポテンシャルはあると思う。いい選手は多い。結果が先に出ると一気に変わるはず」

 ラストカシマ。どんな最後になるかはわからないが、これだけは断言できる。彼は最後までアントラーズの勝利のために戦う。背番号2の勇姿を目に焼き付けよう。

 内田篤人、カシマで現役最後の試合に臨む。

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