ENCORE(アンコール)- 中田浩二 柳沢敦 新井場徹 合同引退試合 -
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柳沢 敦 記念コラム

2008年、元日。「選手としての」ラストゲーム。

 アントラーズの象徴、背番号13。思い出を挙げ始めたらキリがないが、強烈な印象が残っているのは、やはり、移籍前ラストゲームだろうか。2008年、元日。国立競技場に鳴り響き続けた、柳沢コール。天皇杯制覇の喜びはもちろんあれど、それを上回る感情が、アントラーズレッドのスタンドに渦巻いていた。

 2007年の冬、アントラーズは大逆転でのリーグ優勝を果たし、天皇杯でも着々と頂点への階段を上っていた。待ちに待った栄光の時、黄金期の再来を予感させる日々。しかし、サポーターの心中ではざわつきが収まらなかった。柳沢に浮上した、移籍の可能性。アントラーズ残留を信じながらも、別れの予感を捨てきれない――。報道に一喜一憂し、様々な思いが去来する、年の暮れを過ごすこととなった。

 柳沢は、12月22日の天皇杯準々決勝、Honda FC戦で決勝ゴールを挙げた。決勝では、ダニーロのゴールをアシストした。「来年も、ヤナギとともに戦いたい」という思いを改めて強くした背番号12は、決勝戦終了から1時間が経っても、スタンドを後にすることはなかった。柳沢コールを繰り返し、「ヤナギと行こう、アジアへ行こう」と、歌い続けた。

 その声に応えるように、柳沢は再びグラウンドへ姿を現した。スタンドへ駆け寄って、一礼した背番号13。それは、別れの予感が現実のものとして、目の前に現れた瞬間でもあった。サポーターは、思いを届けるべく、声を枯らした。悲鳴にも似た歌声は、鳴りやむことはなかった。優勝を決めたスタジアムで、あんな感情を抱いたのは、きっとみんな、初めてだった。

 あれから7年が経ち、コーチとしてアントラーズに帰ってきた柳沢。「ヤナギと行こう、アジアへ行こう」。あの時の思いは、形を変えて、7年越しで実現した。

 引退試合を前に思い出される、しばしの別れの記憶。2008年元日、天皇杯決勝。柳沢敦、「選手としての」アントラーズでのラストゲームだ。
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