ENCORE(アンコール)- 中田浩二 柳沢敦 新井場徹 合同引退試合 -
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新井場 徹 記念コラム

2008年、12月6日。ピッチで掲げた、シャーレ。

 「タイトルを獲りたい」。2004年、ユースの頃から慣れ親しんだG大阪のユニフォームを脱ぎ、鹿嶋の地へやってきた新井場徹はその決断の真意を問われ、そう答えた。

 それから3年、誰よりも欲していた念願のタイトルを獲得した時、新井場はそのピッチに立ってはいなかった。アントラーズがJリーグ史上初となる10冠を軌跡の大逆転優勝で達成した、2007年12月1日。新井場は前節のアウェイ浦和戦で受けた不可解な退場処分のため、出場停止を余儀なくされていた。優勝決定後、ピッチに入り仲間たちと10冠を祝うも、心の底からの喜びとはならなかっただろう。そしてそれはその1ヵ月後に、国立のピッチで天皇杯を受け取った時にも感じなかっただろう。なぜなら、新井場が心から欲していたのは、Jリーグというタイトルだったからだ。

 2008年、リーグ2連覇を狙うアントラーズは、キャプテン小笠原がシーズン半ばに左膝半月板損傷及び前十字靱帯損傷という大けがを負い離脱するなど多くの苦難に遭いながらも、最終節には連覇へ王手をかけた。その最終舞台は、札幌。アウェイゲームながら、連覇を信じる約2,000人のサポーターが札幌ドームの一角を占め、チームと共に戦った。

 小笠原不在の中、黄色いキャプテンマークを腕にしたのは新井場だった。「彼は真のプロフェッショナルであり、私のチームにとってかけがえのない存在」と当時のオリヴェイラ監督が評した、この左サイドバックはチームの勝利のため、普段と全く変わらない冷静さとゲームの読みを魅せつつ、左サイドを疾走した。

 そして、試合終了のホイッスル。野沢の豪快なミドルシュートで決めた1点を守り切ったアントラーズは1-0という美しいスコアでリーグ2連覇を飾った。栄光のリーグシャーレをチェアマンから最初に受け取ったのは、キャプテンの新井場だった。

 90分間プレーして、手にする初めてのシャーレ。その重みは格別だったことだろう。普段はクールな新井場だが、この時ばかりはチームメート全員と歓喜に酔いながら、満面の笑みを浮かべた。

 その笑顔を、私たちはこれからもずっと忘れない。
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