神戸戦の注目プレーヤーは、レオ シルバ!

「日本国民は外国人を温かく受け入れてくれて、文化と習慣に敬意をもって接してくれる。いろいろなことを人生で経験していく中で、そういう感情を持っています」

 レオ シルバは静かに、鋭い眼光とともに言葉を紡ぎ出した。埼玉スタジアムでの激闘、そしてあの出来事。5月4日、Jリーグの主催試合は1つだけ。5万7000を超えた観客はもちろんのこと、詰め掛けたメディアの数もタイトルマッチに匹敵する多さだった。仕切りとなる柵が設けられたミックスゾーン。その肉声を収めるべく、その表情を捉えるべく、中盤の支配者のもとに記者が殺到した。

 激闘の余韻、そしてキャプテンの訴え。ざわめきが収まらないアウェイの地で、レオは淡々と語った。「試合中の興奮状態においてはあり得ることで、自分はそれを受け流すことができる性格でもあり、“日本人はそういうことをしない”と受け入れて流せる性格です」。憤り、怒り、悲しみ――。去来していたであろう感情を胸に押しとどめ、静かに言葉を紡ぎ出していた。

「ゴールデンウィークということで『子どもたちが休みの中で、手本となるべきプレーや姿勢、言動、ふるまいをしないといけない』と言われていました。だからこそ、そのような行為があったのは悲しいことです」

「自分は父親であって、他人に対してそういうことをするのは恥ずかしいです。父親はヒーローであり、見本でもある。それが人生の大事な役割だと思います」

 ウーゴ・レオナルド・シルバ・セレージョ、31歳。地球の裏側、母国を遠く離れた日本でキャリアを刻むプロフェッショナルだ。その能力については改めて言うまでもないだろう。U-20ブラジル代表に名を連ねた経験を持つほどの実力者はピッチを縦横無尽に駆け回り、リーチの長さを活かした力強いプレスと激しいボディコンタクトでボールを狩り取っていく。過去4年間、対峙するたびに存在の大きさを知らしめられ、攻略に手を焼いた。“2人、3人いるかのような運動量”という描写は、決して大げさな形容ではない。

 日本で充実のキャリアを築いてきたレオ。昨年末、大きな決断を下した。慣れ親しんだ新潟からアントラーズへの移籍。「素晴らしい歴史があり、数々のタイトルを獲っている偉大なクラブ。その歴史にたくさんのタイトルを残したいと思います」と新たなるチャレンジへの決意を語ると、瞬く間に不可欠な存在となった。リーグ戦では10試合中9試合に出場し、ACLのグループステージはフルタイム出場。開幕直後は不用意なボールロストも散見されたが、「全てがすぐにうまくいくわけではないですからね。互いの特長やタイミングを把握できるようになりました」と、日々進化を遂げている。

 昌子はその驚異的なタフネスを称して「レオは運動量があり過ぎる」と冗談交じりに笑いつつ、「新潟の時に何でもかんでも自分でやっていたから、俺らに任せてほしいところにもついてきたりする。でも、そこでこっちが『任せろ!』と言えば、理解してすぐにマークを受け渡してくれる」と、全幅の信頼を寄せている。守備面だけではない。迫力満点の攻撃参加、そしてチーム屈指のテクニックも抜群の輝きを放つ。練習中に華麗な足技でチームメイトを翻弄し、スタッフを驚嘆させることがしばしばあるほどだ。甲府と蔚山で突き刺した強烈なミドルシュートは、どちらもワールドクラスのゴールだった。31歳、充実の時を迎えたポテンシャルは底知れない。

「今日の目標はホームで勝ってグループステージ首位で突破することでした。それだけにフォーカスして、集中して取り組むことができました」

 あの出来事から6日後、5月10日。選手たちが戦いの場へ姿を現すと、カシマスタジアムに大きな「レオ シルバ」コールが鳴り響いた。決意に満ちた表情で、両手を挙げて応える背番号4。ともに戦うサポーターからのメッセージを全身で受け止め、90分間を走り抜き、そして勝利という任務を遂行してみせた。

「習慣の違いがあっても互いを尊重して接し合うということを日本で教わりましたし、ずっと感じていたんです。(コールを聞いて)“ここは日本なんだ”という感じがしました」

 去来する思いを胸にとどめて戦いを続ける強さ。試合を終え、笑顔でスタンドに手を振る優しさ。フットボーラーとして、夫として、父親として――。レオが鹿嶋で歩む日々は続いていく。真のプロフェッショナルと出会えたことを、ともに戦っていけることを、アントラーズファミリーみんなが誇りに思っている。

 最後に一つ、紹介したいことがある。浦和戦の前日、レオに尋ねた。「ペドロと一緒にゴールを祝うパフォーマンスはどうやって思い付いたのですか?」手の甲を合わせるハイタッチをした後、同時に跳んで身体をぶつける、あのゴールセレブレーションだ。心優しき戦士は、流暢な日本語とジェスチャーを交えて教えてくれた。「ペドロの子どもと私の子どもが会った時、2人でやるポーズ。だから私たちが試合でやれば、“あっパパもやってる!”ということになるでしょ」。笑顔が一段と明るくなった。翌日、あの出来事に際して毅然とした態度で「ヒーローであり、見本」であり続けたレオ。その偉大な姿に心からの敬意を表したい。

 「このユニフォームに袖を通してきた偉大なブラジル人たちである、ジーコ、レオナルド、ジョルジーニョのように成功できるように頑張ります」。その言葉を実現するために、レオは今日も戦う。勝利だけを見据えて、レオは今日も走り続ける。

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