2007 Jリーグ ディビジョン1 リーグ戦 第33節 vs浦和レッズ
2007.11.24(土)14:00キックオフ
 

 首位レッズとの直接対決を制し、延長廃止後のリーグタイ記録となる8連勝をマークして1差にまで接近した。66分に野沢が決めたゴールを守り切った。42分に新井場が2回目の警告で退場になりながら、1人少ない状況で決勝ゴールが生まれた。89分には船山も退場処分を受け、最終的に9人になるという絶対的不利の中で勝利をつかんだ。今季の3位以内が確定し、来季のアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場を獲得したほか、Jクラブ初のリーグ通算300勝目も達成した。

 左サイドバックの本山からのクサビのパスをペナルティーエリア付近でマルキーニョスが落とす。それを拾って左に向けてドリブルを始めた田代から、勢いを殺した丁寧なパスが出る。左サイドから中を狙っていた野沢は、トラップもパスも選択せず、そのまま右足のインサイドキックでゴールを狙った。ゴールラインから約30度の地点。角度はなかったが、ハーフタイムに石井コーチから「相手GK都築が前に出てくる」ことを聞かされていた野沢は、GKの頭を越すシュートでファーサイドを狙った。思惑通り、ボールは前に出てきていたGK都築の上を越え、必死に伸ばす右手をかすめて、ゴールへと飛び込んだ。野沢とゴールを結んだ線のその先には、3000人のアントラーズサポーターが陣取っていた。そのスタンドに届けるような美しいゴールは、選手のテクニックとスタッフのスカウティングの結晶だった。1人少ない状況を打ち破っての、決勝ゴールの瞬間だった。

 序盤からペースを握った。開始1分の小笠原のミドルシュートが攻撃開始の合図になった。マルキーニョスが、田代がゴールを狙い、ボールを支配するアベレージも高かった。7分の本山のシュートは闘莉王のハンドに阻まれ、直後の小笠原のFKは転倒者が続出する滑りやすいピッチに足をとられる形で得点には結びつかなかった。それでも、右サイドで内田が果敢に飛び出し、左サイドで新井場がトリッキーなパスで決定機を演出するなど守備陣も効果的に攻撃に絡んでいった。38分の闘莉王の決定的なシュートがポストに当たる幸運もあったものの、開始から40分間でのシュート数は7対3。アントラーズが試合を優位に進めた。
流れが変わったのは42分だった。新井場がこの日2枚目となるイエローカードで退場処分を受けた。ここで本山が急きょ左サイドバックに入った。30分に相手のクリアボールを顔面に受け、右目がほとんど見えない状態だったという本山は、左サイドに入るとセンター寄りが見えにくくなっていた。ただでさえ、本職ではないポジションに入っただけでなく、いつものような視野が確保できないハンディも背負っていた。

 後半に入ると、当然ながら、レッズはこのサイドを重点的に攻めた。突破の起点にしようという意図が十分に感じられた。アントラーズに4差をつけていたレッズは引き分けでも十分なはずだったが、1人多くなったことで攻めに転じてきた。逆に1人少ないアントラーズも、守ってカウンターを狙うことを徹底した。新井場の退場で、ゲームは別の方向へと動いた。
岩政のいつも以上の球際の強さ、1人少なくなって大きく広がったスペースを埋める青木のスピード、ボールのこぼれどころを予測する大岩、DF陣をすり抜けてくるシュートを確実にセーブする曽ケ端…。守備陣の後半の集中力は今季最高の出来だった。その中で生まれたワンチャンスをつかんだ。66分、右目が利かなかった本山が見つけたゴールへの道筋を、マルキーニョス、田代、野沢がたどって、優勝へと続く1本の糸を紡いだ。

 リードを奪っても、厳しい状況には変わりなかった。石神の出場停止や後藤の負傷、そして勝つしかないという状況もあり、オズワルド・オリヴェイラ監督はDF登録の選手を1人もベンチに入れていなかった。だが、船山、増田という2人のMFを両サイドバックとして投入し、中後を入れて中盤の守りを締めさせるなど、要所で効果的なベンチワークを発揮して守備網を整備していった。その船山がつばを吐いたとして89分に退場となったことは誤算だったが、長く感じられた3分のロスタイムを守り切った。

 リーグ初の大台である300勝、延長戦のなくなった現行制度下(2003年以降)では最多タイとなる8連勝、ACL出場、そして何より首位に1差肉薄という事実。6万人の中の5%に過ぎない3000人のサポーターとともに、チームは数々の収穫を手にした。カシマスタジアムで行われる12月1日の清水エスパルス戦が、フットボールドリームの最後の舞台となる。

 
会場:埼玉スタジアム2002・観衆:62,123人・天候:晴
鹿島アントラーズ vs 浦和レッズ
1 0 前半 0 0
1 後半 0
66分:野沢 拓也(田代 有三) 得点
(アシスト)
 
33分:新井場 徹
42分:新井場 徹
71分:小笠原 満男
87分:内田 篤人
89分:曽ケ端 準
警告 7分:田中 マルクス闘莉王
20分:ワシントン
42分:新井場 徹
89分:船山 祐二
退場  
72分:IN:船山 祐二
(OUT:田代 有三)
80分:IN:中後 雅喜
(OUT:野沢 拓也)
87分:IN:増田 誓志
(OUT:内田 篤人)
交代 37分:IN:細貝 萌
(OUT:平川 忠亮)
73分:IN:小野 伸二
(OUT:相馬 崇人)
スターティングメンバー
鹿島アントラーズ
曽ケ端 準 GK 21
内田 篤人 DF 2
岩政 大樹 DF 3
大岩 剛 DF 4
新井場 徹 DF 7
青木 剛 MF 15
小笠原 満男 MF 40
本山 雅志 MF 10
野沢 拓也 MF 8
マルキーニョス FW 18
田代 有三 FW 9
 SUB
小澤 英明 GK 1
増田 誓志 MF 14
中後 雅喜 MF 16
船山 祐二 MF 23
大道 広幸 MF 30
柳沢 敦 FW 13
興梠 慎三 FW 17
 
浦和レッズ
都築 龍太 GK 23
坪井 慶介 DF 2
田中 マルクス闘莉王 DF 4
阿部 勇樹 DF 22
相馬 崇人 DF 16
鈴木 啓太 MF 13
長谷部 誠 MF 17
平川 忠亮 MF 14
ポンテ MF 10
永井 雄一郎 FW 9
ワシントン FW 21
 SUB
山岸 範宏 GK 1
細貝 萌 DF 3
ネネ DF 5
小野 伸二 MF 8
内舘 秀樹 MF 19
西澤 代志也 MF 27
岡野 雅行 FW 30
 
監督コメント
<ハーフタイム>
鹿島アントラーズ:オズワルド・オリヴェイラ監督
・後半立ち上がりから攻撃も守備も全員で行わなければならない。
・苦しい時間帯が続くかもしれないが、最後まで戦い抜くこと。
浦和レッズ:ホルガー・オジェック監督
  ・前半からどちらに転ぶか分からないような試合展開の中で、我々のチームのゲームができるかどうかが大切である。
 
<試合終了>
鹿島アントラーズ:オズワルド・オリヴェイラ監督
  今日の結果が勝利という形で終わったことをうれしく思います。この浦和戦に向けて特別なことはしていません。シーズン当初から選手が(私を)信じてやって くれた結果です。戦術的な詳細は言えませんが、選手たちには常々、自分たちのサッカーを貫くということを言い続けてきました。そして、選手たちは結束し、 自信を持って戦ってくれたと思います。
(鹿島サッカーのキーワードは?という問いに)
毎 日取材に来てくださっている記者に聞けばわかるのではないでしょうか、あるいは、住友金属の社員の方に聞いていただいても、いい情報が得られると思います よ。それは冗談としても、とても1つは2つの言葉では言い表せないので、鹿嶋は遠いかもしれませんが、ぜひ取材にきてください。
浦和レッズ:ホルガー・オジェック監督
  今日は勝って優勝を決めたいと思って試合に臨みましたが、このような結果になって残念です。アントラーズは強いチームで、いいサッカーをしていました。前 半、われわれはいつも通りのサッカーができずに、ナーバスな面もありました。後半は相手が10人でボール支配率でも上回っていましたが、しっかり引いてカ ウンターという相手の手法にはまってしまったという感じです。
 

TOPへ戻る