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2020年12月26日(土)

FREAKS Vol. 303(2020/12)より 〜ピッチに立つ意味〜

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試合を経験することで成長を感じれば、自信がついてきたことが窺える。沖悠哉を見ていると、いかに選手にとって出場機会が財産になり、実戦が糧になるかがわかる。

明治安田生命J1第9節の鳥栖戦で、2-0のクリーンシートでデビューを飾ってから18試合に出場(28試合消化時点)。2-1で勝利した第17節のC大阪戦では自身のビッグセーブでチームを助け、1-0でしのいだ第18節の湘南戦も果敢なプレーで勝利に貢献した。

一方、今シーズンのアントラーズは無失点で終えた試合が少ないように、沖は「すべてが課題」と話す。まだまだ経験も少なければ、技術も足りないことはわかっている。それでも21歳の若きGKは、強みと語る足元の技術と積極性で、自分にしかできないプレーを目指す。そこには、偉大なる先輩に代わって出場している意味と責任があるからだ。

ザーゴ監督に抜擢された真意と、求められている役割とは──。

前線から積極的にいく守備と
セットしてボールを持たせる守備

──第9節の鳥栖戦でリーグデビューを飾り、第12節のG大阪戦以降は、ずっとゴールマウスを守っています。試合に出続けることでわかってきたことも多いと思います。今シーズンのチームの守備に対してはどのように考えていますか?
「一番後ろから見ていても、前線から積極的にプレスをかけ、それに連動して中盤、DFもラインを上げていくので、自分が守る範囲はゴールエリアだけでなく、DFの背後全域だと思っています。最近の試合では、前線からプレスをかけていても、リズムが悪いときやうまく機能していないときには、自分たちでセットして、あえて相手にボールを持たせる守り方もできるようになってきました。それを先導してくれているのが、ワン君(犬飼選手)と健斗君(三竿選手)ですが、みんなからも声が出るようになってきているので、全体が見える自分も声をかけることができたらと考えています」

──細分化すればキリがないでしょうが、大きく考えて、二つの守備が遂行できるようになってきているということでしょうか?
「そうですね。自分たちに流れがあるときは、前線から一気にプレスをかけて、相手のゴール近くでボールを奪う。得点を奪える可能性は高いですし、チームとしてはそこを目指しています。一方で、状況はいろいろとありますけど、相手にボールを持たせて奪い返したらカウンターを狙うこともできています。リズムが悪いときには、自分たちが一度引いて、セットすることでスペースを埋め、前向きの守備を仕掛けられています。ただ、セットするといってもどん引きするのではなく、気持ち的にはあくまで前向きに、ですよ。相手のスキを突いて奪う意識は、常に持ち続けています」

──7連勝した時期もあるように、勝ち星も増えてきました。一方で、勝ち切れない試合もあります。いいときと悪いときの差はどこにありますか?
「難しい質問ですね……答えになっているかはわからないですけど、システマチックに戦ってくるチームには、対応できるようになってきたと思うんです。ただ、3-2で逆転勝利した横浜FM戦(第31節)がそうでしたけど、相手の選手が縦横無尽に走り回り、こちらの想定を超える動きをされると、対応し切れないところが、まだあるように感じています。あの試合は、ハーフタイムにザーゴ監督からの指示を受けて改善されましたけど、それを自分たちでも対応できるようにならなければいけないと感じています」

──チームとして状況判断する力を上げていかなければいけないということですね。
「想定外の状況が起きたときに、自分も含めてですが、まだ慌ててしまうところがあるかなと。そこはメンタリティーや経験の部分も大きいと思うんです。だから自分も、チームがうまくいっていないときには、声をかけて雰囲気を盛り上げることも大切ですし、シュートストップで流れを変えるようなプレーをすることも大事。そういう意味でも、自分はまだまだ試合経験が浅いので、毎試合が勉強だと思っています」

──チームは、攻撃的なサッカーを目指しているだけに、全体的にハイラインになります。先ほど、ご自身も言っていましたが、DFの背後にできるスペースに対しては、どのような意識を持って臨んでいますか?
「これは現代フットボールにおいては、GKの鉄則に近いと思っています。だから、自分たちが攻めているときに、相手FWが残っていたら、DFに対してはケアするように強く言っています。そこはザーゴ監督からも求められていますし、そこでミスをして失点してしまうのは一番、もったいないですからね。自分が失点しないためにも、リスク管理は徹底的にやっています」

──自分もカバーしつつ、DFに対しては常に警鐘を鳴らしていると?
「フィールドプレーヤーに伝えても聞こえないときもあるので、そこはうるさいくらいに言うようにしています。声をかけたとき、手を挙げてくれる選手もいますけど、反応できないときもありますからね。それでも、耳に入るだけで違うと思うんです。試合に出ている以上は責任がありますし、まずはチームが勝たなければいけない。そのためには、失点しないことが一番。自分も失点はしたくはないので、ならば、どうするのか。考えれば必然的に、未然に防ぐしかない。だから、試合に出始めたころよりも、失点しない可能性をより高めるために、最近の試合のほうがチームメートに対しても強く言うようになったと思います」

──現代フットボールにおけるGKのあり方という話が出ましたが、足元の技術もその一つです。ザーゴ監督が目指すフットボールにおいては、GKである沖選手もビルドアップに加わるプレーを求められています。
「どちらかといえば、自分のストロングは足元で、伸ばさなければいけないところがシュートストップだと感じているので、このフットボールをやるうえで、自分のストロングを最大限に出すしかないと思っています。海外を見ても、今のGKはビルドアップもできて、ロングキックも正確で、セーブもできることが主流。自分もそこを目指していきたいんです。そのためにはキックの精度はもちろん、まずはゴールを守ることが先決。試合に出たことで、いろいろな課題が見えてきているので、そこはポジティブにとらえながら取り組んでいければと思います」

デビュー戦前は緊張と不安を抱くも
2年半やってきた自分を信じた

──ここからは個人のことについても聞かせてください。プロ3年目でようやく巡ってきた出場機会です。デビュー戦となった第9節の鳥栖戦を前にした心境はいかがでしたか?
「ザーゴ監督からは数日前に、次の試合で起用すると言われていたんです。そのなかで緊張もあれば、今の自分が試合に出ても大丈夫なのだろうかという不安もありました。ただ、いろいろと考えていくなかで、自分は何のためにこの2年半、アントラーズで練習してきたのかという思いに行き着いたんです。自分で言うのもあれですけど、練習では真面目に取り組んできたという自負もありました。だったら、今さらどうこう考えず、ミスをしたらしたらで仕方がない、思い切ってプレーしようと思えたんです」

──自分がやってきた2年半を信じようという思いでピッチに立ったんですね。
「はい。ただ、その直前は、誰かに話しかけられてもうまく答えられないくらい緊張していたみたいです(笑)。両親にも、『何かあったのか?』『どうしたの?』って言われたくらいだったので(笑)。直前まで試合に出ることは両親にも言いたくなかったので、そのときは『頭が疲れているのかもしれない』と言って濁したんですけどね」

──そうして立ったデビュー戦のピッチはどうでしたか?
「鳥栖戦はナイターでしたよね。よくよく考えると、自分は夜7時からの試合を経験したことがほとんどなかったんです。試合にしても90分間出場したのは、この2年半で、活動再開後の練習試合が初めて。そのときも、これほど疲れるものなのかと思ったくらいだったので、鳥栖戦は本当に疲れました。危ないシーンもありましたけど、みんなが守って助けてくれましたし、本当にみんなのおかげで失点をゼロに抑えて勝利できた試合でした。あの試合、2回連続でシュートストップした場面があったんですけど、自分でもいつもとボールの見え方が違うというか。地に足が着いていないと感じるくらい緊張していたんです」

──そこからコンスタントに試合に出ることで変わってきたところはありますか?
「今も、ゴールを守っているという責任は強く感じています。自分がうまいからという理由で試合に出ているかといわれれば、僕はソガさん(曽ケ端選手)やスンテさん(クォン・スンテ選手)よりも足りないところばかり。そんな自分がなぜ試合に出ているのか。それはきっと、足元の技術であったり、年齢が若いことによる積極性だったりを買われているんだと、自分なりに考えたんです。だからこそ、試合ではアグレッシブにプレーし、相手と接触したとしても負けない球際の強さを見せなければと思っています」

──試合に出られるようになった今、感じていることはありますか?
「試合に勝っても負けても絶対に課題はあるということです。J1というプレースピードが速い試合のなかで、練習とはまた違った景色が見えてきてもいます。GKコーチの洋平さん(佐藤コーチ)も、その課題をポジティブにとらえてくれています。それを克服できるときが来たら、また一歩、成長できるのかなと思っているんです」

クォン・スンテから言われた
ハーフタイムのアドバイス

──ご自身でも名前を挙げていましたが、曽ケ端選手、クォン・スンテ選手に代わって自分がゴールマウスを守っている責任をどう感じていますか?
「ソガさんはアントラーズのゴールマウスをずっと守ってきた人であり、スンテさんはACL(AFCチャンピオンズリーグ)で3回の優勝を経験しているGK。おそらく、その2人と比べたら、自分のことを知らない人も多いように、レベルの差もあると思っています。ただ、試合に出られるようになった今、思うのは、2人をリスペクトしつつも尊敬しすぎず、絶対にポジションを渡さないというくらいの気持ちで、練習にも臨まなければいけないということ。なぜなら、試合に出られなくなった今も2人は、練習で一切、手を抜くことがないんです。一緒に練習していても、このシュートを止めるのかと思わされることのほうが多い。年長の選手がそういう姿勢を見せてくれているからこそ、自分ももっとやることで、山田をはじめ、荒木や染野、松村といった自分よりも若い選手たちに、姿勢を見せることができたらと思うんです。そうすることで、さらに競争も激しくなりますし、いい循環が生まれて、チーム全体が成長するとも思います」

──スンテ選手はハーフタイムのたびにアドバイスしてくれていますよね?
「はい。本当にありがたいです。プレー一つひとつのこともそうですけど、立ち居振る舞いについてもアドバイスをもらっています。『失点したときにGKが下を向いてはいけない』とも言われました。『士気が下がったときこそ、GKが声を出せ』とも言われました。経験ある先輩からアドバイスをもらえるのは感謝しかない。メモを取ったり、頭にたたき込むことで、今後の自分に生かしていきたいです」

──今シーズン、チームはリーグ戦28試合を戦いクリーンシートが4試合しかありません。そこはどうとらえていますか?
「防げる失点はもちろん多いですし、自分がそこでこうしておけばというシーンはたくさんあります。でも、なぜ、その状況で自分がそこにいたのかという理由は、すべてのプレーにあるんです。そのうえで、この場面でこのはじき方はダメだった、このポジショニングはよくなかったという反省もある。プレースピードが速いなかで、いつ判断するのか、いつ首を振るのかもそうです。試合に出たことで感じていることがたくさんあるので、それを練習から意識して高めていくしかないと思っています。もちろん失点はしたくないですし、ゼロで終われることが一番。でも今は、失点からも学ぶくらいの気持ちでプレーできたらいいのかなとも思っています」

──リーグ戦も残りわずかになりました。どんな締めくくりにしていきたいですか?
「自分たちがどれだけ上の順位にいけるか。チームとしてもそこを意識して練習から取り組んでいます。そうしたなか、自分が試合に絡めている状況はうれしいですし、今まで経験できなかったことでもある。それだけに1日1日を無駄にすることなく、レベルアップしていけるように頑張りたいと思います」

沖悠哉が考える
ディフェンスの美学

足元の技術は守備陣に安心感を与える
自分が考えるGKとしての強みを聞けば、沖悠哉は守備ではなく攻撃にあると答える。

「やはり特長は足元の技術になります」
 一発で前線に届けるロングキックは当然のこと、DFからバックパスを受け、つなぐビルドアップにも自信があると言う。これは現代のGKにとって必須の能力だが、「後ろに預けられる選手がいる」という心理は、間違いなくDFに安心感を与える。そのキックは、小学生時代から磨いてきたものだ。

「今でも覚えていることがあるんですよね。小学校高学年のとき、試合の合間にパントキックの練習をしていたんです。そのとき、『この蹴り方だ』と、しっくりきた瞬間があったんです。その感覚は今も残っていて、そこからどんどんうまくなっていった印象があります」

アントラーズのアカデミーで育ったことも大きいと話す。

「アカデミーで指導を受けた熊さん(熊谷浩二コーチ)も中村幸聖さん(ユース監督)も、積極的なミスに対しては怒ることがなかったんです。そうした環境を作ってくれたことで、足元の技術を生かすこともできましたし、自分のよさを伸ばすこともできたのかなと。だから、育ってきた環境には本当に感謝しています」

攻撃は最大の防御。後ろに沖がいることで、DFは安心して攻撃に参加できる。その存在感は、攻守の連動性を生んでいる。そして、アントラーズの新しい武器になっていく。

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