▼▼MATCH HIGHLIGHTS▼▼
2023明治安田生命J1リーグ 第27節、カシマスタジアムでセレッソ大阪と対戦した。
リーグ戦中断期間に行われたYBCルヴァンカップ プライムステージで名古屋に2戦合計2-3と負け、準々決勝敗退を喫したアントラーズ。タイトルを1つ失った悔しさもさることながら、どちらの試合も試合終了直前に失点するという展開に厳しい現実を突きつけられた。選手たちはもちろん、スタッフ、そしてファン・サポーターも絶望の淵に立たされたこの敗退を乗り越えるには、勝ち続けるしかない―。
そう誰もが思い、迎えるリーグ再開初戦、戦う相手はアントラーズより上位にいるC大阪。選手たちは目の前の敵を倒すことだけを考え、この試合へ向けて準備を進めた。戦いの舞台は、カシマスタジアム。我らがホームは、「~茨城発、世界へ~理想科学×Antlers ファミリーデー2023」が開催されることもあり、試合前から最高の雰囲気に包まれた。
スタメンは、GKが早川、フィールドプレーヤーは広瀬、植田、関川、安西、佐野、ピトゥカ、樋口、松村、鈴木、垣田が入った。ベンチには、沖、昌子、須貝、柴崎、土居、カイキ、エレケが座る。
どちらも残されたタイトルはリーグのシャーレのみという状況もあり、試合は序盤から激しい展開となった。アントラーズは優磨と垣田が前線で精力的に動き回り、中盤、最終ラインでの守備の負担を軽減する。また、DF陣もゴールを守る早川との連係で高いラインを保ち、C大阪に自由な攻撃を許さない。
すると13分、自陣のゴールを向いたままボールを受けた喜田に優磨が背後から狙いすましたかのように襲いかかり、ボールを奪取。優磨はそのまま、左足で冷静にシュートを放ち、先制点を決めた。
この先制点で勢いづいたアントラーズは優磨を中心にC大阪ゴールに迫るも、C大阪も負けておらず、試合は一進一退の攻防が続いた。そしてアクシデントが23分に起きる。ボールを蹴りに行ったピトゥカが競っていた喜田の左脚を強く踏んでしまう。ピトゥカはボールを蹴った直後だったこともあり、全く意図をしていた行為ではないが、ここでVARが介入した。オンフィールドレビューの結果、25分、ピトゥカにレッドカードが提示され、一発退場を余儀なくされた。
この不運の退場劇に対し、アントラーズベンチは猛抗議を繰り広げる。そして27分、岩政監督がイエローカードを宣告されると、29分には笠井通訳にレッドカード。アントラーズは約5分の間に、フィールドプレーヤーを1人、そしてチームスタッフを1人失うという窮地に立たされた。
試合が再開されてもなお、スタジアムを取り巻く雰囲気は異様なものとなる。その雰囲気に煽れるかのようにC大阪は1人少ないアントラーズに対し、荒々しい攻撃を仕掛けてきた。アディショナルタイムも8分という苦しい前半となったが、アントラーズは10人で何とか守り切り、ハーフタイムに入った。
後半に入っても、数的有利の立場であるC大阪が香川を中心にアントラーズゴールへと襲いかかる。しかしアントラーズは関川、植田が体を張った守りを見せれば、サイドからの攻撃は安西、広瀬が抑え込む。そしてその安定したセービングでチームを支える早川が声をかけ、最終ラインは高い位置を保ち、C大阪は再三オフサイドで自らのチャンスを無にしていった。
72分、垣田に代わり、カイキ、松村に代わり、柴崎が、続いて77分、広瀬に代わり、須貝がピッチに入ると、10人のアントラーズはしぶとく守りながらも追加点のチャンスを窺う。一方のC大阪はやはり香川を起点に攻撃の手を緩めない。しかしスタジアムの興奮に気が削がれたのか、カピシャーバ、レオ セアラといった攻撃陣に最後の精度はなかった。
逆にアントラーズは78分、優磨のパスからカイキが抜け出し、カウンターを仕掛ける。右サイドから中央へ向かって疾走する柴崎に渡れば、というビッグチャンスだったが、カイキのパスがワンテンポ遅れてしまい、バランスを崩した柴崎が放ったシュートはゴールの枠に飛ばなかった。続く83分、アントラーズに最大の追加点の好機が訪れる。またしても優磨の動きからカウンターに入り、最後はカイキが相手GKヤン ハンビンと一対一になり、シュート。しかしこれはヤン ハンビンの正面をつき、追加点を得ることはできなかった。
その後、86分、安西に代わり、昌子、樋口に代わり、土居がピッチに入ると、アントラーズはスリーバックに布陣を変え、右サイドの須貝と左サイドにまわった佐野も深い位置を取り、ほぼ5人が最終ラインに並び、ゴールにしっかりと鍵をかける。ここからアディショナルタイム6分を含め、全員で守り切ったアントラーズがC大阪から勝利を奪った。

終始荒れた試合展開となったが、絶対に勝たなければいけないホームゲームに数的不利という状況の中でも、アントラーズはしっかりと1-0(ウノゼロ)の勝利を得た。首位の神戸が広島に0-2と敗れ、その勝ち点差は6。順位は3位へと浮上し、今宵の勝ち点3は大きな意味を持つこととなった。
「毎試合が決勝戦」(ピトゥカ)も、残るは7試合。次節も2位の横浜FMとの“6ポイントゲーム”だ。戦いの舞台は、再びここカシマ。もう勝ち続けるしかない。
【この試合のトピックス】
・この試合の勝利で、C大阪とはリーグ戦13試合連続で無敗(11勝2分)
・優磨が今季リーグ戦12ゴール目で、自己記録を更新
・優磨がLIXIL賞を受賞

A.素晴らしい戦いだった。選手たちもそうだし、ファン・サポーターの皆さんも含めて、このクラブがいくつかの試合で経験してきた、乗り越えてきた試合を、また乗り越えてくれたと思う。試合を見ながら、僕も経験したある試合を思い出しながら見ていた。これを乗り越えたら、こいつら本物になるなと思って見ていて、乗り越えてくれた。いよいよ彼らが成長を見せ始めているなと実感した。
Q.1人退場者が出て少なくなった状況で、うまく試合を進めたように見えた。選手たちにはハーフタイムにどのようなことを伝えた?
A.守備に関してはある程度、入られるのは仕方がない。うちの左サイドを相手がコンビネーションで深く入ってくるので、そこはクルークスのカットインを含めて、ニアゾーンを取ってくることに気をつけようと。それ以外はクロスからの攻撃が主だったので、そこは粘り強く対応するしかないということ。あと45分残っていたので、守ろうというだけでは守り切れない。ボールを動かせるときには動かして、走っていってカウンターを取っていく。セットプレーが取れればしっかり休めるということを共有した。後半は良くやってくれた。
Q.今日の勝因は?
A.今年は選手たちがいろいろな経験をした。僕のチーム作りが遅れたこともあるが、選手たちはプレーをしていて、試合中にいろいろなことが起こる。シーズンの頭にもいろいろなことが起きた。終了間際に追いつかれたり、ひっくり返されたりという経験もした。そこはよく立て直して半年を戦ってきたが、ルヴァンカップという大きな試合で、同じように最後の時間帯で失点することを2試合連続で経験して、選手たちはすごく苦しかったと思う。スタートから出た選手もそう、途中から出て追いつかれた選手もそう。その選手たちにここで乗り越えてほしいということを伝えて送り出した。素晴らしかった。その前に1点を取れたことが大きかった。チームとして準備してきたものがしっかりと出て、プレスがかかってのものだった。それも含めて素晴らしい試合になった。
Q.岩政監督自身、頭に浮かんだ試合は?
A.退場者が出て、1-0で勝った試合。2007年の第33節浦和戦と似ていた。前半のうちに退場者が出て、当時は後半に野沢が先制を取ったのかな、今日は先に取れていたのが大きかった。(チームとして乗り越えた?)外から見るとチームは戦術がどうこうとフットボール的なところにフォーカスされることが多いが、選手はフットボーラーという人生を生きていて、それぞれが生き残らなければと過ごしていて、たとえば源は今年に移籍してきてなかなか出場機会が得られないなかで、粘り強くチームを支える仕事をしていたり、聖真もそう。ヒデも移籍をしてきて、少し適応に苦しんでいて、ここで乗り越えるんだというところで送り出した。チームでいろいろな出来事がシーズン中に起こるなかで、こういう試合を勝ち切るというのは、すごく大きな力になるし、今試合に出ていない選手も含めて、昨日もオンライン取材でお伝えしたように、すごく成長に対して意欲的に取り組んでいる練習が日常にある。名古屋戦のような出来事があったとしても、続けてできたことが今日につながっている。それは2007年の話でいえば、ルヴァンカップ敗退の雰囲気にも少し似ているのかもしれない。
Q.首位との勝ち点差が6。今、考えていることは?
A.トップとの勝ち点差を常に意識しているし、選手たちにも伝えている。二桁になったときに、早めに一桁にしようという話をしていた。一桁になればいろんなことが起こりうる。そういう状況になってきた。そこから欲をいえば、2試合でひっくり返せるようにしたいと、7月か8月くらいに話をしていた。今、そこに近づいてきているし、直接対決が残っていて横浜FM、浦和がホーム、神戸とは国立でほぼホームですから、この強みを生かしたいと選手たちと共有した。日程表を見せて、これがどれだけ楽しみなチャレンジになるかは伝えた。選手たちもそこに向かっているところで、ロッカーも優勝するまで叫ぶのはやめようと話をしたが、実際に自分たちが捉えてきているところがある。鹿島が常勝だとよく言われるが、実は勝ち点で獲ったタイトルは2009年からない。最多勝ち点での優勝は十何年もない。それだけ難しいことにチャレンジしている。その十何年の間の優勝チームは、比較的新しいトライをしているチームが確立して優勝していった一つの歴史があると思っていて、僕はそこにトライしようということを就任当初から選手たちに伝えている。選手たちが意欲的にこのフットボールで勝ちたいと思い始めている。それが実を結べばいい。勝ち取らなければ何も残らない世界なので、どんどん成長していって、最後の試合となるホームの第34節横浜FC戦で優勝を意識して進んでいくつもりでいる。
C大阪は順位的にも近いところにいる。難しい戦いになると思う。相手には素晴らしいストロングポイントがあり、リスペクトもしている。自分たちはそれに対して、ネガティブになることなく、自分たちのやるべきことを続けていき、勝利を手繰り寄せていきたい。
この試合は、決勝戦のつもりで戦う。チームのために戦うという部分は変わらない。C大阪戦でも同じようにチームが勝つために戦い、ファン・サポーターの皆さんに勝利を届けられるようにしていく。
【樋口 雄太】
タイトルを一つ失ってしまったので、リーグ戦に全てをかけるしかない。リーグ戦はまだ優勝するチャンスが残っていて、目の前の試合を1試合ずつ全力で戦っていくことがカギになってくる。
ホームでの戦いなので、たくさんのファン・サポーターの皆さんの力を借りながら勢いをもって試合に入ることができれば、必ず勝利できると思っている。チーム全員で勝ちにいく姿勢というところを見せていきたい。
C大阪は、攻撃陣が非常に強力。その選手たちに勢いづかせてしまうと、自分たちのゲームにしていくことは難しくなる。ただ自分たちのフットボールを出すことができれば、おのずと相手の勢いを弱めることができると思う。
【安西 幸輝】
C大阪はクロスからの得点が多いチーム。サイドでのクロスの対応がこの試合は肝になってくると思っている。クロスが多い分、サイドバックの守備というところが大事になってくる。しっかり無失点で抑えていきたい。
C大阪と同じく、僕たちもクロスからのゴールが多い。そこも狙っていきたい。
この試合の結果がシーズンの行方を左右すると思っていたので、大きな価値のある勝利になった。相手にボールを持たれる時間が長かったが、最後までチーム全員で我慢強く守れた。ファン・サポーターの魂のこもった声援を受け、一緒に戦っていることを実感し、自分たちも結果で応えられて良かった。
【松村 優太】
この試合でチームに勝利をもたらすという強い思いを持って臨んだ。(終盤に失点した)ルヴァンカップ準々決勝の記憶がよぎった人もいるかもしれないが、数的不利になったなかでも最後まで粘り強く守り切れたことは大きな収穫となった。チームがさらに成長していくために大きな意味のある試合になった。
【須貝 英大】
とにかく集中して、気負わず自分のプレーを心がけてピッチに入った。個人的に名古屋とのルヴァンカップ準々決勝第1戦で途中出場して失点してしまった責任を感じているので、今日は最後まで守り切れて良かった。チーム全員でファン・サポーターの皆さんの声援を力に変えて戦い抜くことができたので、大きな1勝になったと思っている。
【早川 友基】
苦しい時間が長かったが、ここ数試合の反省を生かすことができた試合だった。自陣に引きすぎるのではなく、時にはプレッシャーをかけにいったり、主体的な守備ができた手応えがある。数的不利になったときは1点リードしていたので、チーム全員でまずは失点をしないことを心がけてプレーした結果が勝利につながった。
【垣田 裕暉】
右サイドハーフのポジションでプレーしたことはほとんどなかったが、献身的に走って、守って、自分のやれることをやろうと思っていた。どんな試合展開になっても勝ち切る強さを持っているのは、Jリーグのなかでもアントラーズしかいない。常に変わらず勝利を追求する姿勢がこの結果につながったと思っている。