DRAMA Vol.03 プロ化の匂い

住友金属に勤務していると、自分の担当している仕事で論文を提出しなければならない時期がある。平野氏は1976年に、企業スポーツの歴史と現状に関する一考察を書いている。その際、プロ化が進む他企業のやり方を見てこう思った。

「何年か先には、サッカーは絶対にプロ化されるだろう」

長い間、住友金属のサッカーチームに触れていた平野氏が、プロ化の匂いを敏感に感じ取っていたのだ。

平野氏がサッカーのプロ化を予感してから10年ほど後、日本全体の傾向として、サッカーの人気が落ちてきていた。

原因のひとつには、日本代表チームがメキシコ・オリンピック以降世界の檜舞台に出ていないことがあげられていた。

また、子供たちの間ではサッカーの人気が高いのに、その先にプロとしての受け皿がないため、サッカーを続けようという若者が育たない。

今のままでは、日本のサッカーはだめになってしまう。サッカーが好きな子供たちの将来を守り、サッカー界全体のレベルを上げて、なんとか日本のサッカーを世界へ送り込みたい。

そんな願いを込めて日本のサッカー界は「活性化委員会」をスタートさせる。委員会では、起死回生の現状打開策として「スペシャルリーグ」と呼ばれたプロサッカーリーグを検討し始めていた。