DRAMA Vol.16 スーパースターの参戦

鹿島アントラーズが本格的に始動した。 プロとして認められたとはいえ、今はまだスタートラインに立つことができただけで、ほんとうに果たさなければならない目的は、もっと先にある。

まず、強くならなければならない。

チームの増強が始まる。初めに白羽の矢が立ったジーコには、1991年3月から交渉を開始。ジーコもまた、鹿島の夢に賛同するひとりの男だった。

「一企業のチーム強化ということだけでなく、地域起こしとしてサッカーに取り組むのであれば、グラウンド外でもいろいろと協力できるのではないか。このプロジェクトにはとても興味がある」

そんなジーコの話から進展して、同年5月には約150人もの報道陣を集めて入団発表が行われた。ジーコ入団のニュースは日本国内だけでなく、世界的な話題となったことは、まだ記憶に新しい。

世界から注目されているスーパースターのジーコは、多少のブランクがあったとはいえ、技術力や知識はすばらしく、そして何より人格者であった。彼の入団によって、技術はもとより、プロとしてのメンタルな部分まで、チーム全体のレベルアップを図ることができる。いや、チームだけでなく企業、地域、社会まで影響を及ぼすことになろう。そう関係者のだれもが感じていた。

スーパースターの招聘が周囲に良い影響を与え、広く伝わってゆく。「ジーコ効果」なることばが生まれ日本中に認知されるまで、さして時間はかからなかった。この年は、まだ2部リーグで戦いを繰り広げていた時期で、プロになるには弱すぎるなどといわれていた。

だが、「ジーコ効果」は確実に発揮され、2部リーグ第2位まで浮上してプロリーグ開幕への展望が明るくなってきた。