マッチレビュー

第96回天皇杯全日本サッカー選手権大会 決勝 川崎フロンターレ戦

鹿島、6年ぶりの天皇杯制覇!ファブリシオの決勝弾で延長戦を制し、19冠達成!

鹿島が6年ぶり5度目の天皇杯制覇、そして9年ぶりのシーズン2冠を達成した。天皇杯決勝、市立吹田サッカースタジアムで川崎フロンターレと対戦すると、42分に山本のヘディングシュートで先制。しかし、54分に同点に追い付かれ、1-1で延長戦に突入する。鹿島は94分、途中出場のファブリシオが値千金の勝ち越しゴールを決めると、チーム一丸でリードを守り切った。2-1。120分の激闘を制し、6年ぶり5度目の天皇杯制覇を果たした。

鹿島は12月29日、ヤンマースタジアム長居で横浜F・マリノスを2-0で破った。相手の猛攻を受けたものの、曽ケ端と昌子、植田を中心に耐えしのぐと、41分に土居がヘディングシュートを決めて先制。そして73分、柴崎の高速クロスから鈴木が押し込み、リードを広げた。必殺のカウンターから2つのスコアを刻み、元日決勝への切符を掴み取った。

中2日で臨むファイナルへ、チームは大阪に残ってトレーニングを続けた。準備期間はわずかだが、12月に入って7試合を戦った選手たちは動じることはない。山本は言う。「ここまで来たら技術とかではなく、気持ちの問題だと思う」と。疲労を凌駕するタイトルへの渇望を胸に、シーズンラストマッチへと突き進んでいった。


指揮官は準決勝から先発メンバーを2名変更。右サイドバックに西、右サイドハーフに遠藤を起用した。前線は赤崎と土居、左サイドハーフには柴崎が入り、ボランチは永木と小笠原のコンビ。最終ラインは右から伊東、植田と昌子、山本が並び、最後尾には曽ケ端が立ちはだかる。ベンチにはGKの櫛引とファン ソッコ、伊東、ファブリシオ、中村、三竿、鈴木が控える。

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2017年1月1日、青空に恵まれた大阪。元日に戦える誇りと喜びを噛み締めながら、アントラーズレッドの背番号12は朝早くから待機列を成した。タイトルマッチ特有の緊張感と高揚感がスタジアムを包む。2016シーズン最後の決戦へ、大きなチームコールが選手たちを鼓舞。そして14時3分、キックオフを迎えた。

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序盤は川崎Fがボールをキープし、前線への圧力を強めていった。それでも、痺れるような戦いを繰り返してきた鹿島の選手たちが動じることはない。細かいパス交換から突破を図る相手の攻撃に対して、個々が厳しいボディコンタクトを敢行。ペナルティーエリア内では植田と昌子の若きセンターバックコンビが力強く、そして冷静にピンチの芽を摘んでいった。相変わらずの安定感を誇示し続ける曽ケ端も、時折襲う川崎Fのシュートに落ち着いて対処した。

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なかなかチャンスを作れない中、鹿島のキャプテンがチームの闘志に火をつける。19分、ドリブル突破を相手のファウルで阻止されると、烈火の如く怒りを露わにし、スタジアムは騒然となった。褒められた行為とは言えないだろうが、戦う姿勢を前面に打ち出す背番号40とともに、選手たちは迫力に満ちた競り合いを繰り返していった。

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25分以降、少しずつではあるが、敵陣深くまでボールを運べるようになった鹿島。赤崎や土居が最終ラインの背後を狙い続け、献身的なプレスとフリーランニングでチームの推進力となった。34分には遠藤がペナルティーエリア右奥へのパスに反応してクロスを上げ、チャンスを演出。そして36分、左サイドで高い位置を取っていた山本のクロスから遠藤が押し込んでゴールネットを揺らした。だが、オフサイドの判定で得点は認められず。スコアを動かすことはできなかったが、得点の予感が漂い始めた。

そして42分、歓喜の瞬間が訪れた。遠藤が蹴った右CKに反応した山本が、値千金のヘディングシュートをゴール左隅へ届ける。1-0。タイトルマッチにおいて極めて重要な先制ゴールは、長く険しい2016シーズンを誰よりも献身的に、そして誰よりも多く長く走り続けた背番号16によってもたらされた。セットプレーのチャンスを逃さなかった鹿島が、1点リードで前半を終えた。

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1-0で迎えた後半、石井監督は痛みを抱えていた山本に代えてファン ソッコを投入。守備のユーティリティーを左サイドバックに配して必勝を期す。しかし、ビハインドを負って攻勢に出る川崎Fに押し込まれる展開が続くと、54分に同点ゴールを奪われた。ペナルティーエリア手前からスルーパスを通され、最後は小林に右足シュートを決められてしまった。

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同点に追い付き、勢いに乗る川崎Fが猛攻を仕掛けてきた。しかし鹿島はしっかりと応戦し、逆転ゴールは許さない。58分には昌子が渾身のスライディングでシュートブロックを見せ、チームを救った。65分には小林のシュートがポストを直撃する場面もあったが、何とかピンチを脱した。試合は1-1のまま推移していく。

石井監督は67分に鈴木を投入。前線を活性化させて打開を図った。貪欲に突破を目指す背番号34は、力強いポストプレーでチームの基準点となり、献身的なプレスでも川崎Fを苦しめた。

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互いに勝ち越しゴールを奪えないまま、試合は終盤へ。石井監督は88分、最後の交代カードを切った。小笠原に代えてファブリシオ。強力なシュートを備える背番号11はのちに、大きな仕事をやってのけることとなる。互いに譲らない戦いは、1-1のまま延長戦へと突入することとなった。交代枠を2つ残していた川崎Fに対し、鹿島はすでに3選手を交代。ピッチ上の11人が、残り30分の激闘に臨む。

延長前半、鹿島は立ち上がりから攻撃のギアを上げた。途中出場の鈴木とファブリシオが前線で力強い突破とポストプレーを繰り返し、川崎Fを押し込んでいく。93分、ペナルティーエリア内へ飛んだ浮き球に反応したファブリシオのプッシュは、惜しくも相手DFにクリアされてしまった。しかしその直後、この日2度目の歓喜が待っていた。

遠藤が蹴った右CKに反応した西のヘディングシュートはクロスバーに阻まれたが、セカンドボールを拾って敢行した二次攻撃で、鈴木が浮き球を競り合う。空中戦を制して後方に逸らしたボールは西のもとへ飛び、相手との交錯でペナルティーエリア内にボールが転がった。そこに待っていたのは、背番号11。迷うことなく右足を振り抜くと、強烈なシュートがゴール右隅に突き刺さった。94分、ファブリシオ。鹿島が2-1と勝ち越しに成功した。

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再びリードを奪った鹿島は99分にも、遠藤の右CKからファブリシオがヘディングシュート。惜しくも左ポストに阻まれたが、追加点への意欲を示した。延長前半を終えて2-1。リードを保ち、残り15分の戦いへと臨む。

川崎Fは98分に森谷、延長後半開始時から森本を投入して反撃を仕掛けてきた。それでも鹿島は、土居が「あとは試合を終わらせようと思っていた」と振り返るように、しっかりと身体を張って攻撃を阻み、敵陣でのボールキープを織り交ぜながら時計の針を進めていった。機を見たカウンターでも川崎Fに脅威を与え続け、ついにその時を迎えた。

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2-1。試合終了を告げるホイッスルが鳴り響くと、アントラーズレッドの歓喜が爆発した。鹿島が川崎Fを破り、6年ぶり5度目の天皇杯制覇を果たした。リーグとのダブル達成は2007年以来9年ぶりで、シーズン2冠はクラブ通算4回目。これで今季の全公式戦が終了し、ユニフォームに刻まれる星は19個となる。アントラーズファミリー全員で戦い、たどり着いた頂点。市立吹田サッカースタジアムにこだまする歓喜の歌声が鳴りやむことはなかった。鹿島が最高の形で2016シーズンを締めくくった。

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54試合もの激闘の日々を終え、選手たちはシーズンオフに入る。つかの間の充電期間を経て、2017シーズンへ——。来季はアジアでの戦いも待っている。2冠王者として臨む新シーズンに向けて、さらなる進化を。鹿島の歩みが止まることはない。

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【この試合のトピックス】
・2010シーズン以来、6年ぶり5度目の天皇杯制覇を果たした。
・国内三大タイトル19冠を達成した。
・シーズン2冠は2007年以来9年ぶりで、1997年と2000年(3冠)と合わせてクラブ史上4回目。
・川崎F相手の公式戦は、今季4試合で2勝1分け1敗となった。
・市立吹田サッカースタジアムでの公式戦は4試合目で、4連勝を果たした。
・ファブリシオが今大会3点目を決めた。

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